コラム

なぜ中国がTPPに加盟申請? 唐突ではない「アジア太平洋自由貿易圏」と「一帯一路FTA」構想

2021年09月22日(水)19時55分

でも、アメリカ抜きの今のTPPに、そんな力はあるだろうか。アメリカ不在だからこそ、中国は今加盟を申請したと思われるのに。

かつて、ASEAN+3(日・中・韓)を主張した中国に対して、それでは中国が強すぎるからと、他の3カ国(オーストラリア・ニュージーランド・インド)を誘ってASEAN+6を提唱したのは、日本だった。

結局、中国が妥協して、ASEAN+6はRCEPの構築へとつながっていった。

しかし、日本が期待したような「日本やオーストラリア、ニュージーランドなどの民主主義の先進国が加わったことで、RCEPに水準の高さの影響を与える」は、多勢に無勢で、叶わなかったという現場からの報道があったのを覚えている。

中国の参加で、TPPが二の舞にならないとは限らない。日本は、APEC創設時からの同士であるオーストラリア、そしてニュージーランド等と、よく話し合うのが良いのだろう。

対中の懸念から、結局RCEPに参加していないインドの意見も、クアッド(QUAD:日米豪印戦略対話)メンバーとしては、話し合いが必要になるのではないだろうか。

評価や実現の度合いは別として、中国の描く戦略は大きい。アジアや太平洋地域の未来を見据えた日本の大きな戦略とは何か、真剣に考えなくてはならないだろう。

●参考資料
中国の FTA 戦略と一帯一路戦略(江原 規由氏)
TPP とアジア太平洋の FTA:経済連携の方向性(馬田 啓一氏)
APECの概要(外務省)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出合い、EUが変えゆく世界、平等と自由。社会・文化・国際関係等を中心に執筆。ソルボンヌ大学(Paris 3)大学院国際関係・ヨーロッパ研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。編著に「ニッポンの評判 世界17カ国最新レポート」(新潮社)、欧州の章編著に「世界が感嘆する日本人~海外メディアが報じた大震災後のニッポン」「世界で広がる脱原発」(宝島社)、連載「マリアンヌ時評」(フランス・ニュースダイジェスト)等。フランス政府組織で通訳。早稲田大学哲学科卒。出版社の編集者出身。 仏英語翻訳。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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