コラム

モバイル動画の最終形とVRの未来

2016年09月02日(金)16時00分

 そして個人のゲームクリエーターの成功を見て、直感的に楽しい操作性の重要性に気づいた大手ゲーム会社が、資金力にモノを言わせ、より完成度の高いゲームを投入してきた。そうなると個人のゲームクリエーターはひとたまりもない。一掃されてしまうことになる。

 つまり「コンテンツをそのまま投入し失敗」→「デバイスの特性を理解した個人の成功」→「それを洗練させた企業の勝利」という段階を経て、モバイルゲームの最終形へとたどりついたわけだ。

【参考記事】Microsoftをなめるなよ! モバイルの次の覇権はAIでゲットだぜ!!

 これって他のコンテンツでも同じような気がする。スマホでテレビ番組を見れるサービスって、過去に幾つも出てきたけど、ほとんど失敗しているか、まだ大きな成果を出せていない。

 僕自身、モバイル動画サービスの動向をまったく追っていない。なぜならこれまでの動画サービスの多くが、テレビなどのコンテンツをそのまま流しているだけ。スマホというデバイスの特性を理解したものだとは到底思えないからだ。

 もちろん隙間時間にテレビ番組を手軽に楽しめるというメリットはある。でもそれだけ。これまでのサービスの成功って、やはりその程度のメリットに応じたレベルでの成功でしかないと思う。

 ネットやスマホの特性を活かした動画コンテンツのあり方って、別にあるはず。ずっとそう思ってきた。

YouTuberの登場

 そんな中、話題になったのがYouTuberたちだ。口コミで話題になりやすい内容を手短に撮影したコンテンツは大変な人気となり、中には広告料をかなり稼いでいるYouTuberもいると聞く。つまり「コンテンツをそのまま投入し失敗」→「デバイスの特性を理解した個人の成功」の段階にまできているわけだ。

 そして最近になり、プロの映像制作会社によるモバイルならではのコンテンツが登場し始めた。

 その極めつけがLINE LIVEで放送されている「WANTED~キンコン西野逃走中!?~」という番組だ。

 簡単に言うと、一般視聴者がオニで、お笑い芸人キングコング西野亮廣さんが視聴者から逃げる「鬼ごっこ」だ。

 西野さんは、どこにでもあるような住宅街の中を逃げまわる。その様子をカメラが追うわけだが、カメラに映る街の風景から視聴者が西野さんの居場所を推測し、コメント欄で情報を共有していく。

 一方で視聴者が「いいね!」を押せば、「いいね!」の数に比例した金額が賞金として、最初に西野さんを見つけてタッチした視聴者に支払われることになる。賞金は十万円を超えることもあり、西野さんがポケットマネーで支払うというルール。制限時間は1時間。自腹で支払わなければならない西野さんは、必死で逃げ回る。そういう番組だ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ、25年はゼロ成長と予測 米関税による混乱が

ビジネス

東京コアCPI、4月は値上げラッシュで急伸 高校無

ビジネス

アジアの中銀に金融緩和余地、米関税対応で=IMF高

ビジネス

米USTR代表がベトナム商工相と会談、相互貿易進展
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 4
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 5
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    欧州をなじった口でインドを絶賛...バンスの頭には中…
  • 10
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story