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東京コアCPI、4月は値上げラッシュで急伸 高校無償化の効果も一巡

2025年04月25日(金)11時03分

総務省が4月25日に発表した4月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は、110.0と前年同月比3.4%上昇した。都内で2017年3月撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takahiko Wada

[東京 25日 ロイター] - 総務省が25日に発表した4月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は、110.0と前年同月比3.4%上昇した。昨年4月から始まった都の高校授業料無償化による押し下げ効果が一巡したことに加え、飲食料品の値上げラッシュにより、コアCPIの伸び率は前月の2.4%を大きく上回った。2023年4月以来の高い伸び率。

コアCPIはロイターがまとめた民間予測(同3.2%上昇)を上回った。

高等学校授業料は公立が前年比変わらず(前月は94.5%下落)、私立は1.9%上昇(前月は61.7%下落)となり、ともに前月を大きく上回った。

生鮮食品を除く食料は6.4%上昇し、前月の伸び率5.6%を上回った。4カ月連続で上昇幅を拡大した。コメの価格高騰が続き、コメ類は93.8%上昇して1971年1月以降で最大の伸び率を更新した。うるち米(コシヒカリを除く)は93.1%上昇で76年1月以降で最大の伸びとなった。さらに4月の値上げラッシュの影響が出た。

帝国データバンクによると、主要な食品メーカー195社における家庭用を中心とした4月の飲食料品値上げは4225品目で、単月の値上げ品目数としては23年10月以来の4000品目超えとなった。

このほか、ペットフード(キャットフード)は37.0%上昇で前月を大幅に上回った。値上げに加え、内容量を減らす実質値上げの動きもみられるという。

エネルギー価格は9.4%上昇で、前月の6.1%上昇を上回った。電気代は13.1%上昇、都市ガス代は4.8%上昇でいずれも前月を上回った。政府の電気・ガス料金負担軽減支援事業による総合指数の押し下げは0.16%ポイントと、補助金縮小の影響で指数の押し下げ幅は前月の0.31%ポイントを大きく下回った。

コア対象522品目のうち、上昇が363、下落が96、変わらずが62、非調査対象が1。上昇品目は前月の358を上回った。

コアCPI以外の指数も伸び率が急拡大した。生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は3.1%上昇して24年2月以来の高い伸び率となったほか、総合指数は3.5%上昇で23年4月以来の高い伸び。

<高関税、米国以外には「ディスインフレ圧力」>

4月の都区部CPIは、日銀が目指す賃金と物価の好循環が着実に持続していることを示す内容となった。サービス価格は2.0%上昇した。高校の授業料無償化の影響一巡が大きく押し上げたが、民営家賃が1.8%上昇して94年3月以来の高い伸び率となるなど、価格が動かず「岩盤」とされてきた品目にも値上げが波及している。

もっとも、CPIの先行きは伸び率が鈍化するとの見方が出ている。みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介チーフ日本経済エコノミストは、政府が物価高対策で7―9月に電気・ガス代の補助措置を再開させる方針であることに加え、米国の高関税に伴う世界経済の下振れ懸念から原油価格が下落し、「ドル離れ」などで円高に振れていることを踏まえ「今年半ばには全国コアCPIは前年比3%を割り込み、その後も鈍化傾向が続く可能性が高い」とみている。トランプ関税で米国市場から締め出された中国製品を中心に各国の輸出製品が世界中でダブつくことで、米国を除く各国に「ディスインフレ圧力をもたらす可能性がある点も中期的な物価下押し要因になる」とする。

日銀の植田和男総裁は24日、主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、米国の関税政策の経済・物価への影響を「特に注意して見ていきたい」と述べた。基調的な物価上昇率が目標の2%へ収束していくとの見通しが実現していけば、引き続き金融緩和度合いを調整していくことに変わりはないとしつつ、「予断を持たずに適切に丁寧にデータを見ていきたい」、「それに応じて適切に政策を判断していく」と話した。

ロイター
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