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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

ドイツの美味しい地ビール醸造所巡り

シュヴァーネンビール醸造所とビールカルチャーホテル

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今回泊まった「ビールカルチャーホテル」の母体は、1697年から始まったシュヴァーネン醸造所。1864年からミラー家が引き継ぎ、現在5代目ミヒャエルさん(画像・ビール醸造マイスター) と弟ドミニクさん(レストランシェフ)が中心となり、19種類のビールとクラフトビール、自家蒸留酒を手がけつつ、レストランの営業も行っている。エーインゲンで現存するビール醸造所としては最小規模だが、醸造所と2011年よりホテルも経営するようになった。

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「ビール」のテーマはホテル内のデコレーションにも反映させた。50の客室をビールに因んだ形、色、素材などを用いた。例えばビールの木箱をイメージした木製のパネルが壁面を飾ったり、ビール瓶をイメージした「ビール箱の部屋(画像)」などユニークなアイデアが各所に見られる。さらに現在のホテルの敷地にあった納屋を解体し、その木材を客室の壁や床に再利用した。

ホテルの対面にあるシュヴァーネン醸造所兼レストランは、1983年に完全に建て替えられた。自家製ビールが楽しめるほか、ビアガーデンを併設したモダンなシュヴァーベン地方の郷土料理、醸造コース、醸造所ツアーなどを提供し人気を博している。自家製ビールはミヒャエルさんと父親の二人が中心となり醸造。ちなみにホテル宿泊客の9割がシュヴァーネンビールを飲む目的で来訪するという。

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ミラー兄弟は2018年、地域のビールの伝統と歴史的建造物を現代建築に融合させた「特別なホテルコンセプト」に対して、バーデン・ヴュルテンベルク州の若手企業賞を受賞した。

コロナ禍の影響はありますかと聞いてみると、「離職したレストランやホテル従業員は戻ってこない。新規で従業員を募集しても応募者はいないので大変」と、ミヒャエルさん。観光業界の人手不足はかなり深刻のようだ。

ビールフェス「ウルリッヒ祭」へ

現地入りした日の夕方、エーインゲン・ベルク地区のウルリッヒ祭(毎夏開催のビールフェス)に行った。天候にも恵まれて、3年ぶりに開催されたという同祭は大変な賑わいようだった。主催者は、エーインゲン最大規模のビールメーカー・ベルク醸造所だ。

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ベルク醸造所の歴史は1466年にまでさかのぼり、この地方で最も古い醸造所のひとつ。1757年にツィマーマン家が醸造所の経営を引き継いだ。訪問当日は、9代目経営者のウルリッヒ・ツィマーマン氏(画像)にウルリッヒ祭と醸造所内部を案内してもらった。

地元の人たちが待ち焦がれたウルリッヒ祭では子供向けのアトラクションも大好評だった。

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ウルリッヒ祭を祝うようになってから2021年で111年を迎えたそうだ。だがコロナ禍で周年記念を祝うことができなかったため、「今年は実現できて喜びもひとしお」と、ツィマーマン氏。

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ベルクビールの特徴はすべて開放型(オープン)発酵槽で熟成されている点だ。ビールはオープンタンクで8日間熟成させ、その後、タンニンを濾過し、上面発酵ビールの場合は、酵母を篩い分けスプーンで持ち上げ、次の醸造に加える。2回目の熟成は、密閉タンクで行われるとガイドツワーで詳しく教えてもらった。

オープン発酵の行程は非常に手間がかかるため、醸造所から徐々に姿を消している。しかし同醸造所では、上面発酵の小麦ビールを開放型タンクで熟成させている。この伝統的な製法は今や同社のトレードマークとなり、古い職人技に頼った醸造哲学を守り続けている。

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「オープン発酵にすることで酵母がつくり出す味が繊細になり、表現力の高いビールになります。手間はかかるが美味しいことは当然で、他のブルワリーとは異なる個性をもたせることに成功しました」(ツィマーマン氏)

オープン発酵槽の中を覗くことができるガイドツアーやビール醸造講座、テイスティング会などのイベントも常時開催しているそうだ。 

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次・修道士たちの飲むパン「ツヴィーファルテンビール」

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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