ドイツの街角から
ドイツの美味しい地ビール醸造所巡り
ツヴィーファルテン修道院ビール
修道院のある所には、かつて修道士たちが飲むパンとして醸造していた美味しいビールがある。バロック建築で有名なツヴィーファルテン修道院にも美味しい地ビールがあると聞き、訪問した。
同院の修道士たちの飲み物として最初にビールを醸造したのは1521年。その後、ベダ・ゾンマーベルガー大修道院長は1724年、収入源としてビール醸造を本格的に手がけるようになった。1897年からビール醸造所は、バーダー家の経営となり現在に至る。500年の歴史を誇るツヴィーファルテンビールは、ビールと季節限定のミックスビールやノンアルコール飲料を生産している。
同修道院のビール醸造のフラグシップとなった商品「1521」は、モルトの繊細な味が特徴で、アルコール分5%程、麦汁濃度12%弱のビールで高い人気を誇る一品だ。
現在の醸造所のすぐ隣に新しく設計されたレストランBRAUHAUSは、100席と美しいサンテラスを備え、ビールと料理を存分に味わうことができる人気スポット。前出のベダ大修道院長が1724年に建てた歴史的建造物を近代的なビアレストランに建て直したという。
この醸造所CEOペーター・バーダー氏(画像)にレストランでお話を伺った。
同レストランのハイライトは、この地域初のタンクビールバーから醸造されたばかりのビールが飲めることだ。ビールはフェルゼンケラーと呼ばれる岩壁内の地下室からパイプでレストランに運ばれ、頭上にある大きなビールタンク(画像バーダー氏の頭上後部に見える)で完璧に冷却保存されていて、ここから直接供される。新鮮なビールを提供したいという同氏の思いが込められているそうだ。
同レストランでは12種類のタンクビールと生ビールに加え、豊富な種類のミックスビールドリンク、独自のホップジン「HopGin」、ファインシュメッカー賞を受賞したワイナリー「アレクサンダー・レイブル」のリースリング「KEINBIER」などを取り揃えている。ビール愛好家だけでなく、ワイン好きやアルコールはダメという客にも対応している。
ロッゲンブルク旧修道院のビール
現在、ロッゲンブルク修道院付属醸造所では直接ビールの醸造はしていないが、かつての名残でこの修道院の名を受け継いだビールがあると知り、ロッゲンブルクへ向かった。
話によると、ロッゲンブルク修道院ビールは現在、近郊の街ビーベラッハのシュミット醸造所で独占的に醸造されているそうだ。修道院併設レストランの料理哲学に基づき、ローゲンブルガービールの原材料はすべてこの地域のものを使っている。ローゲンブルガーの水、軽い大麦麦芽、ロースト麦芽にホップを組み合わせ、新しいビールをつくりだしたという。
もちろん同院ビールの製造は、1516年に制定された「大麦、ホップ、水の3つの原料以外を使用してはならない」というバイエルンの純粋令の仕様に厳格に則って行われている。
修道院敷地内のレストランに入り、ランチをとりながら、試飲した。
ビール醸造の歴史は、修道院の歴史と糸を引くようにつながっている。中世のロッゲンブルクでは、すでに修道院ビールが醸造されていたようだ。古地図には、現在、芸術文化会館がある旧西部農場の建物に「酒造権抹消」の記載があるそうだ。
1768/1769年、ゲオルク・リエンハルト大院長は醸造所の建物を全面改築し、設備を整え、既存の醸造所の建物を拡大したという。
この旅に出るまで全く飲んだことのなかった地ビールの数々を思い出しながら、帰路についた。旅に出て、その地でしか知ることのできない逸品は、まだまだ奥が深い。
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko