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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

ドイツ・アウトバーン(高速道路)の走行速度制限130㎞導入?ロシア依存脱却の省エネ対策とは

©Thorsten Runge_pixelio.de

ドイツを訪問したら、走行速度制限なしのアウトバーン(高速道路)を時速200㎞で走ってみたい・・・日本のビジネスパーソンやTV番組制作関係者から頻繁に聞く言葉だ。筆者は現地コーディネーターとして、できるだけ客のニーズに応えるよう努めているが、今後はそんな提供もできなくなるかも知れない。

ご存知の方も多いかと思うが、ドイツはヨーロッパで唯一、ドライバーがアウトバーンで自由にスピードを出すことが許されている国である。

速度制限導入で省エネに加速?

アウトバーンは、これまでも区間により速度制限があった。また全区間走行速度制限は数年前から提案されていた。CO2 排出量の減少、交通の流れがよくなる、重大事故や死亡事故の減少と、いいことずくめでもなぜか実現しなかった。理由は、自動車大国ドイツのロビイストの存在で、今まで政治的に阻まれたからだ。

だがここに来て、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、政府は転機を迎えた。ロシア産のガスや石油依存脱却のために、市民が短期的・中期的にどのようにエネルギーを節約するかについて、多くの提案がなされている。そのひとつとして再び浮上したのがアウトバーンの速度制限だ。

ちなみにドイツのエネルギー消費は、ロシアから輸入に大きく依存しており、最も高いのはガス55%で、石油34%、石炭26%と続く。ウクライナのブチャでの残虐行為が明るみにでてから、EUはロシアからの石炭輸入禁止令を出し、8月第2週から全面的に施行されることになった。

また5月11日から13日に開催されたヴィルヘルムスハーフェン環境会議で、連邦16州環境相は、アウトバーンの速度制限に満場一致で賛成した。このような閣議決定は、これまで一度もなかったという。この会議では制限時速について言及されていないが、ニーダーザクセン州オラフ・リース環境相は130km/hを提唱している。

とはいうものの、今のところアウトバーン速度制限に対し、政府の見解は固まっていない。緑の党と社会民主党(SPD )は、明確に賛成することを表明しているが、自由民主党(FDP)の猛烈な反対に遭っている。

連邦運輸省のダニエラ・クルッケルト大臣政務官(FDP)は、速度制限拒否の理由をこう語っている。

市民の負担を軽減するために、すでに合意された「省エネ対策パッケージ案」に言及し、「公共交通機関を利用する人が増えれば、エネルギーの節約にもなる」と述べた。

このパッケージ案の取り組み例として、ドイツ国内の公共交通機関(特急ICE IC及びECなどを除く地下鉄や路面電車、バス)1か月9ユーロで乗り放題のチケット導入を上げた。発売期間は6月から8月限定で、各月に1チケットを購入する。このチケットを利用することでエネルギー価格高騰の対策や公共交通機関の利用を促す。最終的には気候変動対策にも一役買う。

速度制限のもたらす効果

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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