ドイツの街角から
ウクライナ抗争・ドイツのスーパーから消えた「小麦粉と食用オイル」物価高騰と品薄で不安な市民の暮らし
専門家によると、現在多くのスーパーで食用油や穀物類の入手が困難もしくは不可能なのは、買い占めと物流の両方の問題があると力説する。またポーランドの運送会社で働いていたウクライナ出身のトラック運転手が不足している点も見逃せない。
そしてドイツ小売業協会(HDE)のヨーゼフ・ザンクトヨハンザー会長は4月上旬、「値上げの第二波は必ずやってくる、それも二桁の値上げになるだろう。農家が農業を続けていくためには、コストを転嫁していかなければならない」と、語る。
今のところ、パン用の穀物や肉、野菜は大幅に値上がりしているが、米や牛乳、砂糖は比較的手ごろな価格で購入できる。それも日に日に状況は悪化していて、3つのコスト要因「人件費、原材料、エネルギー」の高騰三重苦で市民の生活は苦しくなるばかりだ。
食料品と言えば日本と同様、ドイツでも食品ロスが大きな問題となっている。連邦食糧農業省(BMEL)とテュネン研究所が2019年に発表した調査によると、ドイツでは1200万トンの食品廃棄物が発生している。その半分以上を占めるのが個人家庭から出る廃棄品で、1人当たり75キロほどを破棄している。
なかでも「深刻な問題は270万トンの回避可能な食品廃棄物が発生している点だ」と、同省は指摘する。例えば「廃棄時にまだ完全に食べられる食品、または時間内に食べれば食べられたであろう食品」の多さだ。
ドイツの食料品は、日本に比べて安い。「あまりにも長い間、食事にお金をかけないことに慣れきってしまっていた。これを機に食とそれを支える農家の仕事への感謝は、適切な価格にも反映されなければならない」と緑の党政治家、レナーテ・キュナスト氏は訴えている。
名前は忘れてしまったが、ドイツのある政治家は、「ウクライナ戦争はドイツ国民全員を貧乏にする」と語ったことが忘れられない。
物価高騰は避けられないし、市民レベルでできることは少ない。だがもう一度、日々の暮らしをふり返ってみたい。買い溜めを控え、食品ロスを減らし、無駄の少ない日々を過ごすよう努めたいものだ。
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko