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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

ウクライナ抗争・ドイツのスーパーから消えた「小麦粉と食用オイル」物価高騰と品薄で不安な市民の暮らし

連邦農業食糧研究所のデータを基にしたドイツ連邦統計局の調査によると、小麦粉については、国内供給不足の恐れはないようだ。小麦粉の生産に使われる軟質小麦の自給率は125%と特に高い。100%以上というのは、ドイツが国内生産で普通小麦の自国需要をまかなえることを意味する。

一方、ライ麦、ライ小麦、オート麦、穀物トウモロコシについては、野菜や果物と同じく、自給率は100%を下回っていて、他国からの輸入が必須。その結果、ドイツ人の主食パンも値上がりが続いている。

ドイツ製パン業中央協会は「「原材料価格の上昇に加え、人件費の上昇、そして何よりも法外なエネルギーコストが、数ヶ月前からパン屋に大きな不安を与えている」と説明する。コストのうち、原材料・素材は約18〜25%、人員は約40〜50%を占めているというが、急激な値上げをすれば客が離れてしまう。とはいえ、店主は値上げをしない限り、店舗存続が難しいという板挟みに頭を抱える。

食品・嗜好品・飲食店労働組合NGGは、「食品業界に携わる企業の存続がコスト爆発で脅かされている。生産コストの上昇は、中小企業の存続を脅かすものであり、中には廃業せざるを得ない者も出てくるだろう」と述べ、先行き不安に拍車をかける。

今さら言うまでもないが、パンデミックとウクライナ戦争は、世界的に生産とサプライチェーンを混乱させ、インフレを促進している。

食料品の価格は様々な要因で決まるので、正確なことは言えない。だが、世界市場での小麦の価格は上昇を続けているのは事実。ドイツ農業者連盟によると、「昨年は小麦1トン当たり200ユーロ程だったが、現在は400ユーロ前後に高騰。もしドイツに供給されるガスが少なくなれば、食品産業に深刻な影響を及ぼすだろう」と警告する。

さらに残念なことに、輸入に頼っていないジャガイモ、チーズ、豚肉、牛乳なども軒並み値上げが続いている。

例えば牛乳と、バター、チーズ、クリームなどの乳製品。ブランドバター250グラムが安い品で2,09ユーロ。前年比で44%も値上がりしただけでなく、今後もさらなる値上がりが想定されている。また半年前には60セント前後で販売されていた1リットル牛乳は、まもなく1ユーロ以上になる模様だ。

乳業業界は、「農家の飼料、肥料、燃料などの生産コストの上昇で、過去に例を見ない程価格が高騰している」と値上げの背景を説明。しかも牛乳不足も大きな問題という。飼料不足に加え、割にあわない過酷な労働と低額販売価格による不条理を理由に生産を放棄する乳業農家が増えたことが大きな理由だと明かす。

値上げの第二波は二桁代に

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著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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