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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

世界の薬局コロナワクチンメーカー「バイオンテック社」が地元マインツにもたらした恩恵 赤字財政から10憶ユーロの黒字に 

マインツ市のミヒャエル・エブリング市長は、バイオンテック社の思わぬ恩恵に諸手を挙げて喜んでいる。市の現在の負債額は合計で約13億ユーロ。今のところ6億3400万ユーロの現金融資を完済し、来年末までに無借金にしたいと考えている。

バイオンテック社の今年1月から9月末までの売上高は、1年前の1億4,000万ユーロ弱から134億4,000万ユーロに急成長した。

「コロナ感染の終息が見えない2021年も難しい年になると想定していた。ところが私たちは今、全く予想していなかった法外な額の黒字を達成している。2022年のわが街は、4億9,080万ユーロのプラスを見込んでいる。さらに今後数年間で大幅な黒字化を達成するだろう」(エブリング市長)

ラインヘッセン商工会議所(IHK)会長ペーター・へーナー氏は、「バイオンテックの世界的な成功は、我々の州都マインツに世紀のチャンスをもたらした」と語る。

ドイツの多くの自治体は、マインツのような財政状況を夢見ることしかできない現状だ。コロナ危機とそれに伴う経済の不安定さの中で、税収が減少したケースもある。さらに連邦政府は昨年、貿易税などで自治体が不足する分を約61億ユーロ補っていた。

一方、連邦財務省の試算によると、連邦政府、州政府、地方政府は今後数年間で、5月の予測よりも大幅に多くの税収を期待できるという。自治体については、前回の見積もりと比較して、今年のプラス分は81億ユーロだそう。

マインツをバイオテクノロジーの世界拠点へ

エブリング市長は「バイオテクノロジービジネスの世界拠点としてマインツを発展させていきたい」と見解を述べた。と同時に、今後10年間の展望をこう明かした。

約5000人の新規雇用の可能性がある。この期間中に10億ユーロの投資を予定している。約30ヘクタールの敷地を利用して、マインツ大学病院や大学と直結したバイオテクノロジーの開発を行いたい。

バイオンテック・マインツのネットワークは、科学分野の企業や研究者など、新たに100人のメンバーを増やしたい。

新たな居住空間の創造、トラムネットワークの拡大などの持続的なモビリティの促進、インターナショナルスクールの設置なども計画している。

さらに、「これを機に、バイオテックハブ機能強化に取り組み、がんと高齢化の研究で世界をリードする拠点への道を歩み続けたい」と、未来図を描いている(市長)。

一方で、IHKヘーナー会長は、マインツがバイオテクノロジーの世界的な中心地になるためには、スピードが重要であり、科学、政治、ビジネスの緊密な相互作用が必要である点を強調した。

バイオンテック社の偉業はグーテンベルクに次ぐ快挙

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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