ドイツの街角から
ドイツは東京五輪無観客をどう評価?「正しい判断」「他の選択肢があったはず」
ドイツの代表選手たちの声とはうって変わって、東京在のドイツ人ジャーナリストは辛辣な意見を述べている。(ドイツのニュース番組ターゲスシャウ)このコメントでは無観客をゴーストゲームと表現しているのでその表記を用いた。
東京オリンピックは史上初のゴーストゲームになった、これまでの経緯から予想されていたことを発表した橋本聖子オリンピック組織委員長は、「他に選択肢はありませんでした」と意気消沈していた。こうして世界最大のスポーツイベントを生で見ることは閉ざされてしまった。
主催者側には本当に選択肢がなかったのだろうか。パンデミックが発生したにも関わらず、これまで特にアスリートのために、威厳ある環境で開催するために、あらゆる努力をしてきたのだろうか。私はそう思わない。
無観客は、開催国自体のコロナ危機管理が完全に失敗した結果だ。コロナパンデミックから1年半、スポーツの祭典オリンピックの開催国でありながら、自国の人々を守るための本格的な計画を立てなかったことが、結果的に無観客に繋がった。オリンピック出場を目指し、その夢を果たした代表選手たちは、人生で最も重要な大会で必要なサポートを受けることができなくなってしまった。
布製マスクの常時着用以外にもできることがあったはず。例えば日本でも入手可能なパンデミック対策のためのツールが一貫して使用されていれば、結果は違ったかもしれない。自己検診、クイックテスト、FFPマスク、または連絡先追跡アプリ、そして何よりも予防接種がもっと早く行われていればよかった。
繁華街の夜は、レストランやバーが満員だ。カラオケ、大人数での食事、仕事終わりのビールなど、何でもありで、週末には満員の地下鉄で友人と野球観戦に行くのも問題なし。許可された5,000人ではなく、15,000人近くの観客がいるという事実、それは問題ではない。とにかく誰もチェックしない。
日本もパンデミックで疲弊しているのだから、人々がコロナ以外のことを考えるのは当然のことだ。しかし、おろそかな対策は次の感染の波が押し寄せてくる要因となる。
菅氏をはじめとする多くの国民が見落としていることがある。それは、オリンピックによって感染者が増加するという議論には、もはや何の根拠もないということだ。最終的にそうなった場合、皮肉な言い方をすれば、日本は自分自身を責めるしかないのだ。
オリンピック組織のトップである橋本氏の見方は違っていても、そう、日本にはこのゴーストゲーム以外の選択肢があったのだ。
残念・素晴らしい日本をアピールできない
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko