ドイツの街角から
ドイツは東京五輪無観客をどう評価?「正しい判断」「他の選択肢があったはず」
東京オリンピック開催まで1週間ほどに迫ってきた。橋本聖子オリンピック組織委員長は「無観客で開催する。他に選択肢はなかった」と発表したが、ドイツの代表選手やメディアはどう見ているのだろうか。
ドイツ代表選手の声・無観客は正しい判断
第32回夏のオリンピック競技大会ホスト国日本は、東京都にコロナ感染の抑止として4度目となる緊急事態宣言を出し、外国人のみならず、地元ファンもアリーナに入場させないと決定した。
ドイツ代表選手たちは、東京大会での無観客に理解を示している。だが、落胆は隠せない。
ドイツオリンピックスポーツ連盟(以下DOSB)アスリートのスポークスマンであるマックス・ハルトゥング選手(フェンシング・オリンピック3度目の出場で東京が最後になる)は、「昨年延期されて以来、今後どうなるのか色々と思いを巡らしていた。無観客は大変残念なことで複雑な気持ちだが、理解できる」と述べた。
「しかし選択肢はかなり前からあった。観客がいなければ、全く別のオリンピックになってしまう。観客席からの声援がなければ、感動は得られない」という。
「過去5年間を東京五輪のために準備してきた。これまでと状況は全く異なるので、どういう成果を出せるか先が読めない。出場できることは大変うれしい。でも東京滞在中、独選手たちはホテルと会場の往復だけで、ほとんど遮断されるだろう」(ハルトゥング選手)
観客席からのサポートを受けられなくなるのは寂しい、観客キャンセルは大きなショックという選手。それでも競技を最高のものにしてお互い応援していきたいという声もあがっている。また「スポーツ精神は無観客でも変わらない」と、心境を明かす選手もいる。決定事項にこだわるよりも、前進のみという気持ちなのだろう。
多くの代表選手は、オリンピックが実際に行われることにとても感謝している。いつもとは違う競技会であっても、ベストを尽くし、すべてを精一杯楽しみたい。無観客は正しい判断だった。最終的には安全第一だからと前向きだ。
一方で先日まで欧州サッカー連盟が主催するナショナルチーム選手権大会(EM)が行われ、数千人の観客が入場したことに矛盾の声を上げる人もいる。
ドイツオリンピックスポーツ連盟ヘルマン代表もEMの観客数に言及した一人だ。
「EM予選の観客数は数千人、決勝では数万人入場した。ということは、アスリートたちにとっても、観客、そして開催国に対しても正当化できるものではない。東京五輪で私たちは安全な選択肢で進め、ドイツ側としては可能な限り安全であることを保証するために、あらゆる努力をするつもりだ。ワクチン接種率は90%以上であり、参加者すべての人に優れた価値と最大限の安全性を提供している」(ヘルマン氏)
ちなみに英国で開催されたEM決勝戦観客数は、6万人と桁外れ。入場には、コロナ陰性証明やワクチン接種証明を提示せねばならなかったとはいえ、これを機に感染者が爆発的に増えるのではと懸念する声も寄せられている。 ジャーナリストの声・他の選択肢があったはず
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko