ドイツの街角から
侮辱発言ばかり目立つ東京オリンピック ドイツから見た3つの懸念
「またもや侮辱発言!これで2度目のスキャンダル!」
東京オリンピック開会式で「オリンピッグ」の演出案を発信したクリエィティブディレクター佐々木宏氏の辞任ニュースは3月18日、ドイツでも瞬く間に配信された。ようやく落ち着いたかのように思われた前回のスキャンダル、「五輪組織委元会長森喜朗氏が女性軽視発言で2月に辞任したばかり」と、その背景も再びメディアで紹介された。
後味の悪い侮辱発言ばかり目立つ東京オリンピックだが、ドイツでは「スポーツの祭典」とは全く違った意味でも注目を集めているように思う。
それは「女性の社会的立場、コロナ禍、原発と地震」の3つの懸念だ。
▼女性を軽視する侮辱発言
日本で美しい女性といわれるには痩せていなければならない。オリンピック、クリエィティブディレクターの佐々木宏氏、プラスサイズモデル侮辱発言で辞任。開会式で渡辺直美さんを豚として登場させるという提案は、女性を軽視した発言(シュピーゲルオンライン)
東京オリンピック、次のスキャンダルは女性を豚に見立てる。渡辺直美さんはエンターティナー、女優、ファッションデザイナー。開会式を数か月後に控え、さらなる不祥事騒動(フランクフルターアルゲマイネ紙)
モビング(嫌がらせ)スキャンダルでまた辞任(スポーツオンライン)
などなど、「オリンピッグ」案は矢継ぎ早にドイツでも速報が飛び交った。聖火リレーは3月25日、福島を出発する。そして7月23日の開会式まであと4か月ほどと切羽詰まっている現状から、たとえ佐々木氏の後任者が決まったとしても、東京オリンピックの演出は佐々木氏の手がけてきた案が起用されるようだと各ニュースは締めくくっている。
ちなみに豚は、ドイツの日常会話でよく登場する動物。幸運のシンボルとしてポジティブな場面で「ラッキーだ。運がいい」としてよく使われる。一方でネガティブな表現もあるが、それは仲間うちや友人の間で使われ、公の場で使われることはまずない。
さらには、2016年リオデジャネイロオリンピック閉会式で、安倍晋三前首相がスーパーマリオ姿で登場した件にも言及している。スーパーマリオが世界の人気者とはいえ、安部氏のこの姿は世界の度肝を抜いた。東京オリンピックの注目度が高まったのは間違いない。
だが、ドイツ市民はメルケル首相がゲームに登場するキャラクターで国際的なスポーツの祭典に登場するとは夢にも思わないだろう。政治家を風刺するテレビ娯楽番組ではあるかもしれないが。
森氏が辞任表明をした2月、東京在のドイツ女性ジャーナリストがレポートを発表した。オリンピック、そして日本の政界を説明したこの記事は、的を得ていた。
「経済先進国、技術大国の日本でなぜ70代、80代の高齢者が今もって国を代表する立場にいて、大きな影響力を持つのか。時代は21世紀。政治家が権力的になったり、傲慢になる感覚、しかも人脈やコネを優先しているのは理解に苦しむ」
▼コロナ禍
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko