ドイツの街角から
侮辱発言ばかり目立つ東京オリンピック ドイツから見た3つの懸念
ドイツ市民が一番懸念しているのはコロナ感染の行方。残念ながらドイツではコロナ感染再拡大が収まらず、深刻な状態だ。3月上旬から段階的にロックダウン(都市封鎖)の規制緩和を導入したが、新規感染者は再び増えた。
そしてコロナウィルス感染の第3波を封じ込めるための対策としてメルケル首相と16州政府は23日、ロックダウンを4月18日まで延長することで合意したと発表した。
ただし、1年前の3月中旬に最初のロックダウンが導入されてから、強化と緩和を繰り返す規制政策に市民は疲れ切っている。
コロナ禍対応は世界共通の課題。日本はドイツほど感染者数も感染再拡大もないようだが、オリンピック代表選手はコロナ感染には敏感にならざるを得ない。
ドイツ代表選手はコロナ禍下でできる限りのトレーニングをしているが、開会しても本当に参加できるのか(例えば参加直前にコロナ感染になる可能性もある)と、頭を抱えている。このような状況下で、心身共に負担も大きい。
英調査会社ユーガブ(YouGov)が2月下旬に行ったドイツでの調査結果によると、「コロナ禍下で東京オリンピック開催は行うべきではない」と回答した人は60%、「コロナウィルス感染の先が見えない中での開催は間違っている」は50%ほどだった。
そしてこのほど、コロナに打ち勝ったとは思えない状況下で、オリンピック開催を優先し、海外観客の受け入れを断念する決定が下された。
このニュースを受けてドイツでは「やっぱり、当然、残念」と意見は様々だ。ドイツ代表選手は、「観客なしの競技は魅力半減だ。会場から伝わってくる熱気や観客からの声援もなければ、モチベーションも下がってしまう」と、がっかりしている。(3月22日フランクフルターアルゲマイネ日刊紙)
2020年開催から1年延期となった東京オリンピック、そして今だ猛威を振るっているコロナウィルス。感染状況は日々変わっているが、話し合いには選手の意見も取り入れてほしいと、ドイツ代表選手は切に願っていた。だがもう時間切れだ。
▼原発と地震
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko