パスタな国の人々
コロナと過ごす、イタリアのクリスマス。
11月20日の時点で、部分的ロックダウンなどの措置が功を奏したのか、イタリア全国のRt(実効再生産数)が1.7から1.18に下がり、死者数も699人(11月17,18日は二日連続700人越え)になった。とはいえ、まだまだ予断は許さない状態だ。
「感染カーブの角度が緩やかになったとはいえ、まだ勝利宣言をするのは早すぎる。Rtが1を超えているということは、感染は増えていくという意味なのだから」とイタリア国立衛生研究所所長のシルヴィオ・ブルサフェーロ氏。
そして「今年のクリスマスは、家族で集まるのも、できる限り人数を小さくして祝いましょう。最大でも5、6人など」とコメントを出したのは、保健省事務次官のサンドラ・ザンパ氏。「でも、人数が大事なのではなく、毎日会っていない人と交わることがリスクを高めるのです。第3波という事態は絶対に避けなければいけません」。
伝統的でデジタルなクリスマスへ
そんな状況下、製菓業界はもちろん、たくさんのイタリア人が、今年、コロナ禍のクリスマスと年末年始のカウントダウンパーティーはどうなるのか、家族と集えるのか、と心配している。ロックダウンが解除されて、ブティックやレストランの営業が再開されたとしても、豪華な食事やプレゼントの予算がないという家庭も多いだろう。クリスマスなんて言ってる場合じゃない、という深刻な状況の人たちも残念ながら多いという事実も忘れてはいけない。
だから多くの家庭で否応無しに、身近な家族だけと家で過ごすクリスマスになりそうだ。そしていつもの年なら忙しくて時間がないワーキングマザーも(ファザーも)、伝統的なクリスマス料理に挑戦したりする。例えばピエモンテ州だったら、手打ちのアニョロッティ(ラビオリ)や、肉のいろいろな部位を茹でいろいろなソースで楽しむボッリート・ミストを。トスカーナ州なら去勢雄鶏のお腹に詰め物をしたローストや、レバーペーストをのせたクロスティーニ。ナポリだったら雌のうなぎ「カピトーネ」をイブの夕食に食べるのが伝統だという。そんな昔ながらのクリスマスのテーブルが、今年は思いかけず復活するかもしれない。会えない家族とはZOOMで一緒に祝う。そんな伝統と最新テクノロジーが混在するクリスマスになるかもしれない。
そして、全ての人が、暖かい部屋と食べ物のあるクリスマスを過ごせますように。そう願わずにいられない。
著者プロフィール
- 宮本さやか
1996年よりイタリア・トリノ在住フードライター・料理家。イタリアと日本の食を取り巻く情報や文化を、「普通の人」の視点から発信。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」でのコロナ現地ルポは大好評を博した。現在は同ブログにて「トリノよいとこ一度はおいで」など連載中。