パスタな国の人々
コロナと過ごす、イタリアのクリスマス。
さて、イタリア人にとってのクリスマスとは、キリストが生まれた日とされる12月25日に、家族で集まってご馳走を食べて、プレゼントを交換し合う大事なイベント。北イタリアでは25日の昼に1回勝負だが、南イタリアでは24日の夕食と25日の昼の2回、クリスマスの食事があるそうだ。敬虔なカソリック信者は食べるばかりではなく、25日の0時に教会のミサへ行ったりもするが、3密を避けるのであればミサもどうなんだろう。
恋人同士も別々に過ごすイタリアのクリスマス
ここで「家族」というのは一緒に暮らしている家族だけとは限らなくて、お祖父さんお祖母さんにおじさんおばさん従兄弟兄弟姉妹などなどが一堂に集まって祝う、そんなのが伝統的なイタリアのクリスマスだ。家族が一人でもかけてはダメだから、恋人同士もそれぞれの家族と、別々に過ごす。
友達同士や仕事仲間とは、12月に入ったあたりから食事会をして、ちょっとしたプレゼントを交換しあったりして楽しむ。日本の忘年会にも似た感じだ。それからバスケットに美味しいお菓子やワインなどを詰めて、日頃お世話になっている人に贈る習慣もある。日本のお歳暮と共通した習慣かもしれない。
そんなプレゼントの購買力や、ご馳走を作って大勢で食べるための贅沢な食材費、ちょっとおしゃれをするための衣装代なんかが、今年は全て控えめになってしまう。
私がイタリアで暮らし始めた25年前には、クリスマスは絶対に家で、一家のマンマ(お母さん)が食べきれないほどのご馳走を作り、家族揃って食べるのが決まりのようだった。だからレストランはチャイニーズ以外全て休業で、一緒に祝う家族がいないガイジンの私は、ふてくされながらテレビなんか見ていたものだった。でも最近は事情が変わってきて、25日にレストランでご馳走を食べようという人も増えている。考えてみれば、女性が社会進出して、共働きが当たり前になった昨今、24日の夜まで普通に会社で仕事をし、25日の昼にご馳走を作れと言われたら、料理担当のお母さん(お父さんでも)たちはストライキを起こしたくなるだろう。だから最近では、たくさんのレストランが25日に営業し、特別なクリスマスメニューが用意される。星付きレストランの豪華な食事がプレゼント、なんていうグルメファミリーも多いし、旅先でクリスマスを祝いたいという人も増えている。
そんなもの全てが今年はお預けになるとしたら、一体どれだけの経済損失があるのだろうか?
著者プロフィール
- 宮本さやか
1996年よりイタリア・トリノ在住フードライター・料理家。イタリアと日本の食を取り巻く情報や文化を、「普通の人」の視点から発信。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」でのコロナ現地ルポは大好評を博した。現在は同ブログにて「トリノよいとこ一度はおいで」など連載中。