パスタな国の人々
コロナと過ごす、イタリアのクリスマス。
日本でも最近はポピュラーになりつつあるので「あー、パネットーネね」とか「あれ、あんまり美味しくないよね」なんて思った方もいるかもしれない。たしかにパネットーネは(そしてパンドーロも)ピンからキリまであって、カサカサでおいしくないものも多いけれど(残念ながら海外輸出用はそういう大量生産品がほとんど)、ていねいに手作りされたパネットーネのフワフワ感、天然酵母の風味とオレンジピールの甘い香りが一体になった味は、病みつきになるおいしさだ。イタリアの菓子職人の間では「最後の戦い」と呼ばれている。おいしく作るのはどんなお菓子よりも難しいということだ。卵やバター、フルーツピールなどがたっぷり入った重たい生地を、天然酵母だけで高く、ふわふわに焼き上げるのは、高い技術が必要だからだ。
神様が作るめちゃウマなパネットーネ
実は私も、最初にパネットーネを食べた時は、カサカサで甘ったるいだけで美味しくないと思っていた。なんのことはない、美味しくないやつを食べていたからなんだけど(笑)。ところがある時、「パネットーネ界のフェラーリ」と異名を持つパネットーネに出会った。「ロイゾン」というその製菓会社は、半オートメーション生産でありながら、代々伝わる天然酵母を使って焼き上げるから、美味しくて、かつ値段はそれほど高くない(イタリアで買った場合)。一方で完全に手作りの高級お菓子屋さんのものなら、1つ(1キロサイズ)が30ユーロを軽く超えるものが多い。それが日本まで輸出されたら、輸送コストなどがのって3倍近くの値段になるから、日本で本当においしいパネットーネに出会うのは難しいと言うわけだ。
そして数年前、今度は「発酵生地の神様」と呼ばれるマウロ・モランディンさんに出会った。マウロさんのパネットーネ作りがどんなに素晴らしくて、どんなにおいしいか。東京でワインバーを営む友人と私が共同で立ち上げた小さなプロジェクト「守りたい、イタリア伝統のおいしさ」第1回で、マウロさんの工房をZOOMで訪ね、作り方を見せてもらった。youtubeにもアップされているので、のぞいてみてください。マウロさんのパネットーネの詳細は、私の個人ブログにも書いています。 noteにも書いてます。
著者プロフィール
- 宮本さやか
1996年よりイタリア・トリノ在住フードライター・料理家。イタリアと日本の食を取り巻く情報や文化を、「普通の人」の視点から発信。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」でのコロナ現地ルポは大好評を博した。現在は同ブログにて「トリノよいとこ一度はおいで」など連載中。