England Swings!
プレミアリーグ初観戦でアウェイの洗礼を受ける
女子スーパーリーグでサッカーのスタジアム観戦デビューを昨秋に果たしたばかりのわたしに、先月、幸運が舞い込んだ。今度は男子のプレミアリーグの試合を観る機会が訪れたのだ。
観戦したのはアーセナル対マンチェスター・ユナイテッド(以下「マンU」)の試合だ。日本の冨安健洋選手もプレーするアーセナルは、今シーズンずっとリーグのトップを走っており、対するマンUはこの試合の時点でリーグ第4位(この記事の時点では第3位)で、おおいに注目された試合だった。
そんな大きな試合に行くことができたのは、友人のマイケル夫妻のおかげだった。このブログでもよくお伝えしているように、わたしはマンUのマーカス・ラッシュフォード選手を応援していて(きっかけについては、こちらの記事をどうぞ)、友人にも暑苦しく語っていた。そのマーカスは昨シーズンは不調だったけれど、今季は一転して絶好調。昨年のW杯からの16試合で14得点をあげて、「勢いが止まらない」と大きな話題になっている。だから、アーセナルのシーズンチケットを持っている友人のマイケル夫妻が、「生のマーカスを見ておいで」とマンU戦のチケットをわたし(と、ついでに夫)に譲ってくれたのだ。
シーズンチケットは1年を通じてスタジアムに同じ席が確保される年間パスのようなものだ。それを持つほどアーセナルが好きなら夫妻こそ試合を観るべきだよ、と伝えると、コネクションだかお付き合いだかの関係でチケットを持っているけれど、「本当はトッテナム・ホットスパーのサポーターなんだよ、はっはっは」とマイケルは笑った。彼にしては珍しく、それ以上詳しく話してくれなかったけれど、会社を経営するリッチなビジネスマンの彼には、庶民には想像できないお付き合いがあるのだろう。
試合は日曜午後4時半のキックオフだった。当日は地下鉄の事故で最寄り駅まで行けなかったので途中からタクシーで向かったけれど、試合の日の交通規制でスタジアム近くまで車が入れず、かなり手前から歩くことになった。
周りには、これから試合を観に行くらしい人たちが、慣れた様子でのしのしと歩いていた。黒いダウンジャケットにニット帽といういでたちの男性が圧倒的に多く、ニット帽やマフラーにはかなりの確率でアーセナルのエンブレムが入っている。スタジアム観戦はこの日が人生2度めのわたしには、この光景だけですでにアウェイ感があった。アーセナルのサポーターでないことを悟られないように注意しつつ、スタジアムに向かった。
試合前にスタジアムに向かう人たち。交通規制で車が入れず、警備員と警察官もあちこちに立っていて、ものものしいほどだ。のしのし歩いていると本文に書いたけれど、サッカーの、特に男性のサポーターは、なんだか妙に胸を張って、マッチョっぽく歩く人が多いように思う。もちろん手ぶらだ。そんな彼らも、試合の前後にスタジアム周辺のフィッシュ&チップスやホットドッグを売る店ではきちんと並び、お行儀よく順番を待っていた。筆者撮影
マイケルから渡されたチケットはクレジットカードのような形態だった。入口で手荷物検査を受け、チケットを駅の自動改札機のようなものにかざして建物の中に入った。さらにエスカレーターで上の階に向かうと、天井までの大きなガラス窓から自然光がたっぷり入るスペースに出た。スポーツ中継の映像が流れるスクリーンがあちこちにかかっていて、カウンターや立ち飲み席のほかにゆったりしたテーブル席もあり、家族連れが食事をしていた。スタジアムというより本格的なスポーツバーという雰囲気だ。
エミレーツ航空の乗務員風の制服を着た女性が何人か立っていて、試合のプログラムを渡してくれた(ふつうはチケットと別に買うものだ)。その女性のひとりに席の場所を尋ねると、すぐ近くまで案内してくれた。なんだか飛行機のビジネスクラスに乗った気分だ。そういえば、バーの隣にあったアーセナルグッズの売店の店員さんも「はい、マダム」と、丁寧な敬語で対応してくれた。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile