England Swings!
サッカー初心者がロンドンで観たW杯2022
スター選手たちが活躍する中、今回特に注目されたのは19歳のジュード・ベリンガム(ボルシア・ドルトムント所属)だ。17歳の時にEURO2020(2021年に開催)に史上最年少で代表に選ばれた期待の星だ。教えてもらったところでは、「攻守の切り替えがものすごく速い」ということのようだ。確かに試合を観ているとピッチのどこにでも彼の姿があって、エネルギーと勢いに満ちて見える。キャプテンのハリー・ケインは「彼に弱みはない」とまで言い切っていた。
Massive win. Into the quarters we go!!! pic.twitter.com/xdz401BhKz
-- Jude Bellingham (@BellinghamJude) December 4, 2022
同じくEURO2020からイングランド代表に加わったブカヨ・サカ(アーセナルFC所属)も弱冠21歳。決勝でペナルティーキックを外して号泣していた姿が目に焼き付いていたけれど、今大会ではそれを跳ね返す大活躍を見せてくれた。昨年のEUROでは不安そうな少年の面影が残っていたベリンガムとサカが、今大会ではどちらも自信に満ちたいい表情になっているのが印象的だ。
それからマーカス・ラッシュフォード(マンチェスター・ユナイテッド所属)。このブログを見てくださっている方にはおなじみのわたしの推しだけれど、決してひいき目ではなく、彼の活躍も大きく取り上げられた。この2年ほどはケガや監督との軋轢(という噂)が重なって不調が心配されていたものの、初戦のイランとの試合の後半に控えから登場し、ピッチに入ってたった49秒後にゴールを決めた! やっぱりスターじゃありませんか!! 勢いづいたマーカスは3試合目のウェールズ戦でも2点を入れた。不調の間は浮かない顔ばかり見ていたので、ファンとしてはマーカスが笑っていたことが何より嬉しい。彼が活躍した試合中には、友人からわたしに「ラッシュフォード!」「さすがスターだね!」というメッセージがたくさん入ってきて鼻が高かった(ふふふ)。
少し変わったことで注目を浴びたのが、最初の3試合で3得点して大活躍だったラヒーム・スターリング(チェルシーFC所属)だ。決勝トーナメントに進出した直後に「家庭の事情で」帰国したのは、家に空き巣が入ったからと発表されたのだ。カタールに行った留守を狙っての犯行だとしたら悪質で腹が立ってしまう。犯人はイングランド人ではないかもしれないけれど、スターリングは国を代表してプレーしているのに! 彼が欠場したセネガルとの試合にはイングランドが勝ったからよかったものの、これで負けていたら騒ぎになったかもしれない。幸いスターリングはその次のフランス戦には無事に戻ることができた。精神的なダメージがあまりありませんように。
選手にまつわるちょっといい話もあった。得点した選手は、よく芝生にスライディングしたりダンスしたりして喜びを表現する。今大会、対イラン戦でジャック・グリーリッシュ(マンチェスター・シティ所属)がゴール後に披露したのは、両腕を広げてうねうねさせる不思議なダンスだった。見慣れない動きに注目が集まって、これは12歳のフィンリーくんとの約束を守ったものだったことが報じられた。
グリーリッシュ自身の妹さんと同じ脳性麻痺があるフィンリーくんは、地元でサッカーを楽しんでいる。それを知ったグーリッシュはW杯の1か月ほど前にフィンリーくんを訪ねていた。その時に「次にゴールしたらミミズ(worm)をやって」とフィンリーくんに頼まれて、それがたまたまW杯の試合にあたったのだ。このダンスのおかげで一躍有名人になったフィンリーくんは、「覚えていてくれると思わなかった!」と大喜び。こういうエピソードはスポーツ選手にはよくあるものだけれど、フィンリーくんと話すグリーリッシュからは温かさがにじんでいて、ほのぼのする。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile