England Swings!
人気が高まる女子サッカーをスタジアムで初観戦
先日、生まれて初めてスタジアムでサッカーを観てきた。
サッカーにはまったく興味がなかったのだけれど、マーカス・ラッシュフォード選手(マンチェスター・ユナイテッド所属)の活動を知ったことですべてが変わった。政府が夏休みの無料給食を中止しようとしていた2020年のことだ。幼い頃、貧しくて食べるものに困った経験のある彼は、同じ思いをする子どもをなくしたいと政府にかけあい、その方針をくつがえした。その勇気と人柄にほれ込んで、彼の姿見たさにサッカーも観るようになったのだ(ルールもわかってきたけれど、オフサイドにはまだ目がついていかないレベルです)。
さらに今年8月に欧州女子選手権(EURO)でイングランドが初優勝した時に、女子サッカーは男子に比べて恵まれない待遇にあることを知った。その時の記事にも書いたように、女子サッカーは男子に比べて人気が低い、だから観客が入らない、だからクラブの収益につながらない、だから選手の収入や設備投資や宣伝に資金が回らない、だからどうもぱっとしなくて人気が出ない、という悪循環なのだ。収入を確保するために副業をする選手も少なくないらしい。
とはいえ、個人でできる支援は試合に行って興行収入を上げることぐらいなので、8月のEURO初優勝後、すぐに9月11日の試合のチケットを買ってみた。サッカーを観ているうちに、いつかは大きなスタジアムで観戦したいと思い始めてもいたし。今回は、サッカーのルールやトリビアは知っていても生観戦は初めて、の夫がつきあってくれた。
わたしが買ったチケットは、9月11日の女子スーパーリーグ(男子のプレミアリーグに相当)のチェルシー対ウェストハム戦だった。チェルシー男子のホームであるスタンフォード・ブリッジ・スタジアムで日曜午後1時のキックオフ。せっかくなのでいい席で観たいと思ったものの、試合まで1か月を切っていたせいか最低料金の9ポンドの席しか残っていなかった。9ポンドって、円安の今でも1500円ぐらいですよ! 日本なら映画よりも安い。プレミアリーグでの同等の席の値段は70ポンド(1万2,000円弱。対戦相手によって変わるらしい)。やっぱり女子の試合は本当に安かった。ただし、同じチェルシーでも、すぐに完売してしまう男子よりチケットが取りやすく、しかもお得、というのは、観る側にとって有利ではある。
こうして初めての観戦を楽しみにしていたけれど、9月8日にエリザベス女王が亡くなって試合は延期になった。がっかりはしたものの仕方がない。それより、その後のクラブの迅速な対応に感心してしまった。最初の試合延期のメールは女王逝去の翌日に届いた。さらに6日後、「試合は9月末に延期されたが小さな方のスタジアムで平日夜に行われる、都合が悪ければ、11月のスタンフォード・ブリッジでの日曜昼間の試合に振り替えることもできる」と連絡があった。しかも9月の試合でチケットを使わなければ、自動的に11月の試合に振り替えてくれるという。もちろんキャンセルして返金してもらう選択もあった。コロナ禍で飛行機の変更やキャンセルの返金トラブルをずいぶん聞いただけに、この効率よい対応には感激もひとしおだった。
結局、わたしたちは11月20日日曜午後1時の試合に行くことにした。対戦相手はトッテナム・ホットスパーに変わったけれど、そこはわが家には問題なし。11月に入ると、すぐに新しいチケットがメールで発行された。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile