England Swings!
インスタグラムで開催中、「カミラ夫人の読書室」
英国に引っ越してきた時、やってみたかったことのひとつに読書会があった。英米圏の映画や本によく登場する、同じ本を読んで感想を話し合う集まりだ。日本で英語の勉強として英国の本を読むコースをとっていて、そこでお互いに感想を言い合うのが楽しかったので、機会があったら勉強でない読書会に参加してみたかったのだ。
わたしがイメージする読書会は、友だち同士が集まって、ワインを飲んだりしながら気軽に語り合うものだった。でもロンドンに暮らして見ていると、読書会は図書館やコミュニティセンターや本屋さんでもやっている。読書を通じて仲間になったグループもあれば、友人同士で読書会を開く人たちもいる。内容にも英語の初級者用、ミステリ小説専門などいろいろな形があって、何かの読書会に属しているという話を人からよく聞く。この国ではわりと身近な存在のようだ。
わたし自身は今、日本と英国の2つの会にオンラインで参加している。読書会で人の話を聞くのはおもしろい。国語の授業ではないので正解はなく、ただ感想を話すだけ。誰かと気持ちを共有できると素直に嬉しいし、思いもよらない感想を聞くと、そんな見方があったのか! と驚く。どちらも和やかな会で、「ここ、わからなかったから教えて」と気軽に聞けるのも気に入っている。読んだ本を通じて知識や考えが広がっていくのが楽しい。
参加している2つの会のほかに、実はもうひとつ、楽しみにしている読書会がある。それがインスタグラムで開かれている「コーンウォール公爵夫人の読書室(The Duchess of Cornwall's Reading Room)」だ。日本の方には「コーンウォール公爵夫人」よりも、「カミラ夫人」という方がわかりやすいかもしれない。チャールズ皇太子がダイアナ元妃と離婚した後、2005年に再婚した現在の夫人だ。Netflixの人気ドラマ「ザ・クラウン」を観ると、ダイアナとの結婚後もチャールズと別れなかった悪い女という印象を受けるかもしれないけれど、今では、少なくとも表面上はわだかまりはないように見えるし、ロイヤルファミリーの一員としてご夫婦でもおひとりでも忙しく公務にあたっている。
この「読書室」が始まるきっかけは、やはりコロナ禍だった。読書好きなカミラ夫人が、ステイホーム生活の励ましにと2020年に読んだ本のリストを公表したところ、「その本がお好きならこちらもお薦め」「ここはどう思います?」というメッセージが世界中から寄せられたそうだ。そこで、世界のどこにいても誰でも参加できる読書会を立ち上げることを思いつき、2021年1月、インスタグラムを使った読書会が始まった。当時の英国はコロナ禍で英国はロックダウン(都市封鎖)状態だったので、人々を励ます意味もあっただろう。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile