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ラッシャー貴子|イギリス

インスタグラムで開催中、「カミラ夫人の読書室」

 読書会のおもしろさは人の意見を聞くことだと思っていたわたしに、「カミラ夫人の読書室」は違う魅力を教えてくれた。課題になった本について考えながら、そのほかにも「本」や「読む」ことに関わる暮らしのさまざまな場面を考えるきっかけをくれるのだ。たとえば、課題書と関係なく、夏の花が咲く庭とベンチの写真に「外で読書をするのは好きですか?」と質問が添えられたことがあった。読書好きとしてはわくわくしてしまって、これまでどんな場所で本を読んだか、どんな気分だったかを思い出したり、理想的な読書環境をぼんやり考えたりして楽しく過ごした。

 シリアの難民キャンプで本を読む子どもたちの写真が投稿された時には、厳しい環境で読書することやその生活を強いられる子どもたちのことを考えさせられたし、カミラ夫人の長男で料理評論家のトム・パーカー・ボウルズが料理家や料理本について語るのを見た時には、料理と文章の関係を考えることになった(動画で紹介されているフードライターのナイジェル・スレーターは、穏やかなライフスタイルを綴った文章がとてもいいのだ)。本を読むことを考える時間にも喜びを感じるようになった。

「読書室」のインスタグラム投稿より、2月から英国で放映される『カササギ殺人事件』のテレビドラマの映像の一部。読書会なら、「この配役をどう思うか?」「自分なら誰を配役するか?(日本の俳優もあり!)」なんて考えてみるのもおもしろそうだ。日本でもミステリの賞を獲りまくった『カササギ殺人事件』には、ミステリファンが愛する要素がすべて詰まっていて、個人的にも超おすすめ。

 「カミラ夫人の読書室」は、今月14日から2年目が始まった。今回は課題書4冊のうち2冊に邦訳がある。上で紹介した『カササギ殺人事件』と、シェイクスピアの妻を新しい形で描いて映画化も決まっている『ハムネット』(マギー・オファーレル著、小竹由美子訳、新潮社)だ。日本語で読んで投稿だけ眺める、投稿を見てから本を読む、あるいは投稿だけ見て読んだつもりになる、すべてアリだと思う。これまでの投稿はすべて遡って見られることだし、この機会に、カミラ夫人と一緒に本を読んでみるのはいかがですか?

今日のおまけ:

英国ロイヤルファミリーと本のつながりで真っ先に思い出す大好きな本がある。日本では『やんごとなき読者』(アラン・ベネット著、市川恵里訳、白水社)として翻訳が出ているThe Uncommon Readerだ。ユーモラスで、本好きにはたまらない(と思う)この本を、下の「読書室」の投稿でも、フランスの作家アントワーヌ・ローランが推薦する本の1冊として紹介していた。わたしもおすすめです!

 

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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