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ラッシャー貴子|イギリス

年に一度のロンドン建物探訪、オープンハウス

ロイヤル・オペラ・ハウスのクラッシュ・ルーム。ふだんはレストランになっているので、じっくり見学できるのは貴重な経験。よく見るとシャンデリアも壁の装飾も夢のように豪華だ。筆者撮影

 古い建物好きのわたしにとってロンドンはパラダイスだ。石やレンガで作られた建築物は長く残るし、ヨーロッパは古いものを好む傾向があるので、わざわざ遠くに出かけなくても築100年、200年なんていう建物をあちこちで見ることができる。古い建物を知ると歴史も学ぶことになって、そこから世界が広がっていくのも楽しい。

 古い建物が今もふつうに使われているのもおもしろい。150年前の花模様で飾られた優雅な建物にマクドナルドが入っていることもあるし、家もほとんどの場合は中古で買って、好みに合わせて内装を変える。新築が好きな日本とは感覚が違っていて、暮らしの中に古いものと新しいものが入り混じり、それでなんだかうまくいっている。教会を改装した家に住んでいるなんて聞いたら、中がどうなっているのか、すごく気になるでしょう?

 そんな建物好きにはたまらないのが毎年9月に開かれるオープン・ハウス・フェスティバルだ。ふだんは人が住んでいたり、業務に使っていたり、立ち入り禁止だったりして入れない、あるいは入りにくい建物が見学できるイベントで、ロンドンをもっとオープンに誰にでも開放することを目的としている。参加は無料で、ふだんは入場料をとる建物でもオープンハウスでは無料で見学することができる(もちろん寄付は大歓迎される)。

 対象になる建物は市内だけでなく郊外にも広がっていて、今年は講演や映画の上映も合わせると800種類がリストアップされていた。とても数日で制覇できる数ではないので、毎年少しずつ見学するのを楽しみにしているファンが多く、今年めでたく30周年を迎えた。最近はYouTubeも始めたようで、家にいながらあちこちの建物を専門家の説明付きで見られるようになった(YouTubeのアカウントはこちら)。

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オペラハウスのバルコニーからはコベントガーデンを一望に見下ろすことができ、遠くにはトラファルガー広場の高いネルソン記念柱やロンドンアイも見える。バルコニーの反対側にはガラス張りの工房になっていて、バレエやオペラの衣装を作ったり直したりする作業をちらっと眺めることができる。この日はバーも開いていて天気もよかったので、グリーンの置かれたバルコニーはまるでリゾートのようだった。筆者撮影

見学できる建物には、たとえば教会やモスクなどの宗教施設(信者でないと敷居がちょっと高いのでありがたい)、使われなくなった19世紀の工場跡、100年以上前に建てられて現役の公団住宅、やはり現役の18世紀の病院、逆に超モダンな21世紀のオフィスビル、個人宅、官庁の入った建物、取り壊しの危機にさらされている建物などがある。どれも歴史、社会、文化の面で価値のある興味深い建物ばかりだ。

 全体の期間は10日ほどあるが建物によって異なり、ほとんどが週末に集中している。当日ふらりと入れるところもあるし、事前のネット予約が必要なものもある。ただし、人気の建物には予約していても長い行列に並ぶ心づもりが必要だ。今年はハイライトのひとつに首相官邸(ダウニング街10番地)が入っていたが、これは事前抽選制になっていた。

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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