Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
夏なのに30℃ 超えない!? 異変が続く冷夏のシドニー
「夏なのに寒い!夏はどこへ行った?」と先月も書いたが、今夏のシドニーは今のところ完全に『冷夏』だ。
雨が多いのも低気温が続く要因のひとつだと思うが、天気が良くなって日差しが強くなったとしても、風が冷たく、それほど気温が上がらない。
いつもの夏なら、我が家では幅6メートルの吐き出し窓を全開にしておくと、海風が流れ込んできて心地よく過ごせるのだが、今夏は寒くて全開にすることがほとんどない。少しでも窓を長い時間開けていると、寒くなってきて足が冷えてしまい、慌てて窓を閉め、靴下を二枚重ねにしたり、しまったフリースをまた引っ張り出して着たりすることも多い。
もう夏は来ないのか?と思っていた矢先、この夏の異常気象が歴史上記録的なものとなっていたことをシドニー天文台の気象観測所が公表した。
「30℃を超えない日」連続記録、140年間で最長
南半球のオーストラリアでは、クリスマスが夏に当たる。そのクリスマスを控えた12月半ばに記録的な寒さで雪が降ったことは、12月15日付けのコラムで書いた通りだが、その後も夏らしい日が訪れないまま、年を越してしまった。
シドニー天文台の気象観測所によると、1月11日時点で、シドニー中心部の日中最高気温が30℃を超えたのは、昨年の2022年2月21日が最後だったそうだ。
南半球の「2月」を単純に北半球の逆と考えれば「8月」となるが、(北半球感覚で言うところの)8月21日以降、一度も30℃を超えることなく夏が終わってしまった感じだ。
「日中最高気温が30℃を超えない日」は、その後も記録を更新。
2023年1月18日の午後2時過ぎにようやく30℃をマークし、2022年2月21日から続いていた記録は途絶えることとなったが、ここまで実に330日間。1882年から1883年にかけて記録された339日間連続記録に次ぐ、歴代2位となった。(参照)
だが、ようやく30℃を超えた!というシドニーっ子の喜びも束の間、その2日後、再びフリースを着るほど寒くなった...。
シドニーでも、フリースがいるのですか? 寒すぎますね。
-- Shinsuke Matsubara (@ShinsukeMekari) January 20, 2023
(昨夜は、メルボルンも、フリースでした。)
今夏は、一瞬、夏らしい日になった!と思っても、またすぐに寒くなる・・というのを数日おきくらいに繰り返している。本当に目まぐるしく変わる天候で、体調の管理も難しい。
余談になるが、シドニー中心部で30℃を超えたその日、シドニー沿岸部の我が家の地域では30℃を超えることなく過ぎてしまい、今夏はまだ一度も30℃を超えていない。(ちなみに、一口に『シドニー』と言っても、シドニー天文台のある中心部、東の沿岸部、海から離れた内陸の西部では、同じ日の気温にかなり差があるため、シドニー天文台で30℃をマークした日は、西部では30℃半ばだったそうだ)
ラ・ニーニャからエル・ニーニョへ、心配される悪夢の再来
1800年代にも同じように、夏でも30℃を超えない日が長く続くことがあったようだが、もしかしたら、地球はかなり長いスパンで似たような気候変動を繰り返してきたのではないだろうか...?
心配なのは、本来、気温が上がるべき時期に上がらないことで、農作物への影響も大きいのではないかということだ。今夏は、旬であるはずのマンゴーも桃も、いつもより甘味が少ないように感じるのは、案外気のせいではないのかもしれない。
2020年の夏以降、オーストラリアはラ・ニーニャ現象に強く影響を受け、とくに東岸は雨が多く、例年より低気温となってきたという。これは今現在も続いているが、ラ・ニーニャ現象は急速に緩和されてきており、今夏を最後にラ・ニーニャからエル・ニーニョへと変わる可能性があると予測されている。(参照)
エル・ニーニョ現象の影響を受けると、乾燥気味の気候になっていくため、また干ばつになるかもしれないと警告する専門家もいる。そうなると、最も心配されるのは2019/2020年に起こったような大規模な森林火災が再び起きることだ。あの悪夢は二度と繰り返したくない。そうならないことを祈るばかりだ。〈了〉
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
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