Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
各州を代表するお国自慢ビールと複雑な豪ビール事情
今も昔と変わらず愛され続けているオーストラリア各州を代表する老舗ブランドのビールたち。製造中止となってしまったものもあるとはいえ、100年以上経った今も作り続けられているものも多く、昔と変わらぬ味を楽しめる。
とはいえ、オーストラリアで昔から愛されてきたビールは、そのほとんどが外国資本に買収されてしまっているのが現状で、今となっては純粋に『オーストラリアのビール会社』だと言える銘柄は、もう数えるほどしかなくなってしまった。豪老舗ビールがどんどん外資系になってしまうのは寂しいが、それが日本の企業であるために、日本人としては少々複雑な心境に陥ってしまうところでもある...
この辺の複雑な豪ビール業界事情は、後半でお読みいただくとして、まずは、ブランド創業100年を超え、今も現役の州代表ビールを一挙ご紹介!
ニューサウスウェールズ州
Tooheys トゥーイーズ
スタイル:ラガー(Tooheys New)
Would you believe that 90% of Australians never heard of Tulsi but 100% of Australians know Tooheys Beer!!! pic.twitter.com/UneQYV5IVT
-- Pepsee de Bilde (@Pepseecool) December 23, 2019
1860年代にメルボルンからシドニーへ移住したトゥーイーズ兄弟が、1869年にビール醸造を開始、1875年 サリーヒルズにて本格的に商業生産を開始した老舗ビール・ブランド。現在の主力商品である銘柄「Tooheys New(トゥーイーズ・ニュー)」は、1931年に開発、商業展開を開始し、今に至る。
ビクトリア州
Victoria Bitter ビクトリア・ビター
スタイル:ラガー
1851年にジーロングでビール醸造を開始し、1854年にメルボルンへ拠点を移して創業した老舗ビール・ブランド。オーストラリアで最も売れているビールのひとつ。
ビクトリア州には、この他に、1904 年創業のMelbourne Bitter(メルボルン・ビター)、 1864 年創業のCarlton Draught(カールトン・ドラフト)もある。また、国内生産を停止していた1888年生まれのFoster(フォスター)が、地元の熱望により、2020年にメルボルンで復活生産されることになった。
クイーンズランド州
XXXX フォー・エックス
スタイル:ラガー
1878年にメルボルンからブリスベンへ移住してビールの醸造を開始、4つの「X」で「フォー・エックス」という風変わりな名前は、1893年にビールの格付けである「X」を4つ獲得したことに由来。1924年に「XXXX」という銘柄で販売を開始した。
タスマニア州
唯一の島州であるタスマニアは、島内でさらに分かれており、北部の地元ビールは「ジェームス・ボアグス」、南部は「カスケード」となる。
James Boag ジェームス・ボアグス
スタイル:ラガー
Cascade カスケード
スタイル:もともとはラガーがメイン
「ジェームス・ボアグス」は、1883年にスコットランドからの移民であったジェームス・ボアグスが創業、北部の町ローンセストンが本拠地だ。
「カスケード」は、州都ホバートにあるオーストラリア国内最古のビール醸造所。創業した1824年から今日まで変わらずに営業を続けている。昔のままの歴史的な建物は、州の遺産として観光名所にもなっている。
南オーストラリア州
Coopers クーパーズ
スタイル:エール
1862年創業。今年でちょうど創業160年を迎え、オーストラリア資本のビール醸造会社としては国内最大。一番人気の「オリジナル・ペールエール」は国内だけでなく、海外にもファンが多い。まさに州のアイコン的存在としてアデレード空港にも「クーパーズ・エールハウス」という名のバーがあり、州を離れる最後の瞬間まで、本場のクーパーズ生で一杯やる人たちであふれている。
南オーストラリア州には、この他に、1888 年創業のSouthwark(サウスワーク)、1859 年創業のWest End(ウェストエンド)というブランドも健在だ。
西オーストラリア州
Swan スワン
スタイル:ラガー
Draught Beer over Craft Beer.
-- thecheese01 (@thecheese01) February 6, 2020
I started drinking Swan Draught and it is still my go to in any WA pub. pic.twitter.com/vIyBadTqAd
1857年にパースで創業。「スワン」という銘柄は、側を流れる川に生息する黒鳥(ブラック・スワン)からとられたもので、ロゴマークにも黒鳥の姿が描かれている。「スワン」は、西オーストラリア州代表ビールとして現在も販売されているものの、実際に製造しているのは州外の醸造所となっている。その一方で、1879年に建造された旧スワン醸造所跡一帯は、州の歴史遺産として登録、保存されている。
西オーストラリア州には、この他に、1837 年創業のEmu(エミュー)というブランドもあるが、こちらも現在は州外で生産されているのが現状だ。
ノーザンテリトリー準州
NT Draught エヌティー・ドラフト(2015年に製造中止)
LOVED BY ALL BUT DRUNK BY FEW, ICONIC TERRITORY STUBBY NT DRAUGHT WILL NO LONGER BE BREWED http://t.co/y9OQyXkmI9 pic.twitter.com/MCexMnEg9f
-- The NT News (@TheNTNews) May 2, 2015
1951年に「ダーウィン醸造所」として創業した比較的新しいブランドであったが、それまでこの地区を代表するビールがなかったことから、アイコン的存在として確立。翌年、「カールトン&ユナイテッド・ベバレッジ」に吸収され、同社が2015年5月に製造中止を発表、ブランドは消滅した。
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著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
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