「破綻国家」ミャンマーを襲った2つの災害が、軍政を終わらせる可能性あり?...政治を揺さぶる「天災の力」

Double Disaster in Myanmar

2025年4月8日(火)14時20分
ルーク・ハント(ジャーナリスト)

地震発生時、各地のモスクでは金曜礼拝が行われていて、多数のイスラム教徒が建物の下敷きになった。さらに270人の僧侶が教法試験を受けていたマンダレーの僧院では50人の遺体が見つかり、150人が行方不明のままだ。

ザガインとマンダレーを結ぶ歴史的なアバ橋は崩落し、マンダレーでは空港の建物などが壊滅的な被害を受け、ネピドーでも空港の管制塔が倒れた。停電と断水が続き、通信障害も解消されていない。


ユネスコの世界遺産に登録されている中部バガンの11〜13世紀の遺跡群や、ミャンマーを経由して中国に向かう石油とガスのパイプラインなどの被害も気になるところだが、これらに関する情報はほとんどない。

ミャンマーの国内情勢は外からはつかみにくい。だが、地震に関する軍政とNUGの発表に基づいて、それぞれの支配地域の状況はある程度把握できる。

NUGは各地で独立を求めて戦う20の少数民族武装勢力(EAO)と共闘関係にあると主張。EAOとNUGの軍事部門「国民防衛隊」(PDF)は2023年末から攻勢を強め、国軍が支配していたタイ、ラオス、中国、バングラデシュ、インドとの国境地帯をほぼ全て制圧した。

ラカイン州を拠点とするEAOのアラカン軍はここ数カ月で中国の石油ガス施設を含むラカイン州西部の大半を掌握、州都シットウェを包囲した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、5000トン級「新型多目的駆逐艦」進水式 

ワールド

仏、政府機関の3割を統合・廃止へ 年内に提案=予算

ビジネス

ECB幹部、6月の0.25%追加利下げでコンセンサ

ワールド

PLO副議長にシェイフ氏、アッバス議長の事実上の後
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 6
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 7
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 8
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中