「破綻国家」ミャンマーを襲った2つの災害が、軍政を終わらせる可能性あり?...政治を揺さぶる「天災の力」
Double Disaster in Myanmar
天災が政治を揺さぶる
軍の統治能力の欠如は、今年12月に予定されている総選挙に向けた国勢調査でも明らかになった。辛うじて調査が実施できたのは国土の半分で、グリーニングによれば、有権者名簿を作成できたのは全330郡区のうち半分以下の145郡区だった。
重要なのは、世界の歴史で、壊滅的な自然災害が政治に大きな影響を与えたケースは少なくないことだ。
1976年に中国北部で発生した唐山地震もそうだった。当時の中国は文化大革命の真っただ中で、行政がまともに機能しておらず、救援活動が遅れ、被害状況の把握や発表も遅れた。それが1カ月半後の毛沢東の死後の、大きな政治改革につながった。
2004年にインドネシアのスマトラ島沖で起きた地震・津波は、同島北部アチェで長年続いた分離独立運動の終結を加速させた。
08年にミャンマーを襲った巨大サイクロン「ナルギス」は死者10万人超えの大惨事となったが、軍政の対応が鈍く、それに対する大衆の怒りが、その後の政治改革と15年の競争的総選挙によるアウンサンスーチーの勝利につながった。
ただ今回、軍政は粘りそうだとグリーニングらは言う。民主派勢力NUGの楽観派でさえ、軍政の崩壊までには1年以上の激しい戦闘が必要だと予想する。
「初期の援助が入ってきたら、政府は救援努力をやめるだろう」と、米戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・マーティン非常勤研究員は語る。「地震後の混乱を利用して、国軍はEAOとPDFへの空爆を増やし、緊急対応措置を制限するだろう」