アフガニスタンを見捨てたバイデンの「民主主義防衛」はもう信じられない
Biden’s Democracy Agenda Just Died an Ugly Death in Kabul.
中国とロシアがタリバンの最大の後ろ盾となり、アメリカが去った後の空白を埋めるのは目に見えている。両国は鬼の首でも取ったように主張するだろう。「今のアフガニスタンを見よ、これがバイデンの言う『民主主義がもたらす』ものだ」、と。
民主主義と人権を旗印にしたバイデンの世界戦略と米軍のアフガニスタン撤退を切り離して論じるのは難しい。
昨年の選挙戦中、タリバンの支配が復活した場合、アメリカはアフガニスタンの女性が置かれる境遇に責任があるのではないかと聞かれて、バイデンは「ノー」と断言した。「責任は一切ない」
その時点でも、タリバンに民主的な統治を行う意思がないことは明らかだった。報道によれば、今やタリバンは米軍協力者を処刑するために捜し回り、少女たちにブルカの着用を強制し、戦闘員の妻にするため支配地域の住民に若い女性を差し出すよう要求している。
オバマがシリアでそうしたように、バイデンもまた民主主義の旗を掲げながら、いざそれを守るべき局面になると、レアルポリティーク(現実政治)の手法に走った。
「多くを約束され、多くを保証されていた」と、身の安全のために匿名で政治ニュースサイト・ポリティコに寄稿したアフガニスタン在住のジャーナリストは述べている。「価値や進歩、権利、女性の権利、自由、民主主義について多くが語られてきた。今やそれら全てが虚しく響く。(アメリカの)関与が一時的なものだと分かっていたら、私は命を危険にさらすような真似はしなかった」
大きな飛躍を遂げたアフガン社会
2001年のタリバン政権崩壊以降のアフガニスタンは、欠陥や腐敗がありながらも、大きな飛躍を遂げてきた。独立したメディアや活発な市民社会がもたらされ、女性の実業家や政府高官が誕生した。こうした進展の大部分は、あらゆる世代の女性の権利を保護し、少女たちを学校や大学に通わせるために必要な多くのものがきちんと用意された。アメリカ人にとっては当たり前でも、アフガニスタン人にとっては長く激しい闘の末にようやく手に入れた自由だ。それが、危険にさらされている。音楽を聴いたり映画を観たり、カフェに行ったり、あるいは髭を剃ったりする自由が、一夜にして奪われようとしているのだ。
■タリバンが来たら殺される、と米兵に助けを求める少女"You're our family. Please help"
— Masih Alinejad (@AlinejadMasih) August 18, 2021
This young Afghan woman is begging an American soldier at the airport to save her. This breaks my heart because I know that the American government gave them hope, but is now leaving them alone and hopeless. This is called betrayal. pic.twitter.com/EhVcNgNFyq
バイデンは16日の演説の中で、人権は「我々の外交政策の中心にある」と改めて強調した。だが「それを実行する方法は、終わりなき軍の派遣ではない。外交や経済的手段を用い、国際社会の協力を取りつけることで実行すべきだ」と述べた。
民主主義諸国と連携して独裁体制に立ち向かうことと、自由を求めて闘う民主的な運動を支援することは、まったく別の問題だ。アフガニスタンに関して言えば、バイデンは民主主義体制の利点を賛美することはできても、実際に民主主義を実現する上では無力だということを認めたように見える。