最新記事

米軍撤退

アフガニスタンを見捨てたバイデンの「民主主義防衛」はもう信じられない

Biden’s Democracy Agenda Just Died an Ugly Death in Kabul.

2021年8月19日(木)20時08分
エリーズ・ラボット

アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領は、国をまとめる努力を放棄し、タリバンを含む暫定政権の樹立に向けた各派との交渉をさぼり、大統領宮殿に引きこもった。アフガニスタンは多民族国家で、人々は部族や軍閥に強い帰属意識を抱いている。にもかかわらずガニは権力を一手に握ろうとして、地方の軍閥の力を借りようとしなかった。政府軍の統率にも細かな点まで口出しし、ベテランの指揮官を更迭して、実戦経験がはるかに乏しい、自分の息のかかった人物を後任に据えた。結果、考え得る最悪のタイミングで、政府軍の指揮系統は弱体化し、兵士の士気は地に落ちた。

バイデンは16日の演説でガニの指導力の欠如を認めた。ガニが国家統合に失敗し、何カ月も前から米政府がプッシュしていたにもかかわらず、タリバンと交渉し妥協策をまとめなかったことを挙げ、それが混乱の原因だと主張した。

だがタリバンが着々と支配地域を拡大して追い詰められた状況で、バイデン政権がちょっと政治的・経済的な圧力をかけさえすれば、さすがのガニも言うことを聞いたはずだ。なぜそうしなかったのか首を傾げざるを得ない。最終的にはバイデン政権もまた、アフガニスタン政府軍と同様、あっさり白旗を上げて、タリバンの勝利に道を開いたようなものだ。

中ロが最も喜ぶのは?

バイデンは、ドナルド・トランプ前米大統領、さらにはその前任者のバラク・オバマとジョージ・W・ブッシュの過ちを繰り返した。

歴代の米政権の過ちとは、アフガニスタンの人々の信頼を勝ち得ることなどとても望めない腐敗した政権にテコ入れを続けたことだ。イラクでもそうだったが、アメリカは大量の兵員を送り込み、巨額の資金をばらまけば、後はアフガニスタンの人々が自力で民主国家を打ち立てると思い込んでいた。国が1つにまとまらないのは構造的な問題があるからだが、米政府は問題の根源に対処しようとはしなかった。

ただ、バイデンが前任者たちと違うのは、民主主義と人権というアメリカの価値を守ると約束して、大統領に就任した点だ。バイデンは、民主主義陣営が結束して、人権侵害や弾圧に立ち向かい、権威主義的な国家との競争に打ち勝つ必要性を雄弁に訴えてきた。

16日の演説では、「アフガニスタンの安定化のための資源を増やし、関心を高めるために、アメリカが何十億ドルもの資金を際限なく注ぎ込み続けること」が戦略的な競争相手である中国とロシアを「何よりも喜ばせる」と述べて、撤退を正当化した。だが今や中国とロシアは「アメリカの敗北」に狂喜乱舞し、タリバン政権が発足すれば、即座に承認する構えだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国が報復措置、全ての米国製品に34%の追加関税 

ビジネス

台湾、米関税対応で87億米ドルの支援策 貿易金融な

ビジネス

世界食料価格、3月前年比+6.9% 植物油が大幅上

ビジネス

EUは米国の関税に報復すべきではない=仏財務相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描かれていた?
  • 3
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 6
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 7
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 8
    テスラが陥った深刻な販売不振...積極プロモも空振り…
  • 9
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 10
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中