アフガニスタンを見捨てたバイデンの「民主主義防衛」はもう信じられない
Biden’s Democracy Agenda Just Died an Ugly Death in Kabul.
バイデン政権のペルー大統領選への対応は、一定の評価に値する。同選挙では右派の候補者だったケイコ・フジモリが、2020年の米大統領選の時のドナルド・トランプと同じ手口を使用。根拠のない選挙不正の主張によって、対立候補だった元教師のペドロ・カスティジョによる僅差での勝利を覆そうとしたが、アメリカの当局者たちが外交的な介入を行い、最終的にカスティジョの勝利が確定した。このような対応は、キューバやベネズエラの政治指導者など、同地域のほかの権威主義者たちに重要なメッセージを送った。
それでも中東やアフリカの独裁者や国王たちは、アラブの春の発祥地であるチュニジアでのサイードの強引なやり方に対するバイデンの対応から、それとは大きく異なるメッセージを読み取った。今年2月には、アブデル・ファタハ・アル・シシ大統領率いるエジプト政府が、アメリカを拠点に活動していたエジプト系米国人の人権活動家の家族を拘束した。そのわずか数日後に、米政府がエジプトに1億9700万ドル相当のミサイル売却を承認したことも、誤ったメッセージになっただろう。
バイデンが民主主義と人権を本気で守るつもりなら、アメリカが民主主義をもたらしたアフガニスタンは格好の試金石になるはずだった。アフガニスタンからの米軍撤退を強引に決めたのはトランプかもしれないが、バイデンが就任してからもう8カ月になる。同国が達成してきた民主主義を守るために必要を態勢を固めることはできたはずだ。
アメリカの協力者を置き去りにするな
これまでアメリカに協力してきたアフガニスタン人たち(一部は何年も前からアメリカに移住する日を待ってきたが、今やタリバンに見つかれば殺されかねない)の国外退避に失敗したことは、官僚主義に縛られて目の前にある民主主義を支援できないアメリカの姿を象徴している。
アメリカに協力した全ての人――軍の通訳だけでなく女性の政府閣僚や教師、人権活動家、アメリカ主導の各種計画を手助けした人々など――を国外退避させることは、「最大限」ではなく「最低限」の対応だ。
アフガニスタンがこれまでに達成してきた成果を守り、後に残される4000万人近いアフガニスタン国民を守るために、アメリカにはまだ利用できる複数の手段があり、米政府はそれを活用するべきだ。たとえば人権保護をタリバン政権承認と金融支援の条件にする。インターネットやメディア報道のためのテクノロジーを提供することもできるはずだ。
米公民権運動の指導者だった共和党の故ジョン・ルイス下院議員は、「民主主義とは状態ではなく、行動である」という言葉を好んで使った。民主主義をなんとか守りたいと考えているアフガニスタン国民に必要なのは、アメリカの崇高な宣言ではなく、具体的な支援だ。バイデンは自らの美辞麗句に見合う行動を起こして、アフガニスタン支援に努力をしなければならない。