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焦点:経済対策要求、参院選にらみ与野党で林立 規模追えば野党に軍配

2025年04月11日(金)13時49分

 トランプ関税の余波を受け、与野党で経済対策を巡る要求が林立する状況となってきた。写真は国会議事堂。2021年5月、東京で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takaya Yamaguchi Kentaro Sugiyama Yoshifumi Takemoto

[東京 11日 ロイター] - トランプ関税の余波を受け、与野党で経済対策を巡る要求が林立する状況となってきた。ただ、7月の参院選前の選挙対策という側面もあり、狙いのブレた主張も目立つ。少数与党下で減税や規模を追えば、かえって野党優位の状況となりかねず、慎重な対応を求める声も残る。

<減税か、一律給付か>

「大胆な財政出動が必要になる」。トランプ関税に伴う金融市場の動揺を受け、複数の与党関係者はこう口をそろえる。

トランプ米大統領が2日に想定を上回る相互関税を打ち出して以降、市場の混乱は収まっていない。9日に相互関税の上乗せを90日停止すると表明されたことを好感する場面もあったが、11日の取引では、株価が再び値崩れした。

「ただでさえ物価高で苦しいのに、市場心理の冷え込みが実体経済に悪影響が及ぶのは必至」(自民中堅)との声は強い。関係者2人によると、内需の柱となる個人消費を下支えするため、新たに経済対策を策定し、5万円の一律給付を実施する案が出ている。

野党からも対策要求が強まっている。

国民民主党は消費税率を5%に引き下げることや、ガソリン税の暫定税率を6月までに廃止することなどを要求。日本維新の会からは、食料品の消費税を2年間ゼロとする案が浮上している。

<バラマキ批判警戒も>

とはいえ、一律給付には「単なるバラマキと受け止められ、選挙対策にもならない」(別の自民中堅)と懐疑的な声もくすぶる。

一方、消費減税に関しては、石破茂首相みずから「適当ではない」と1日の記者会見で火消しに回った。「この状況で減税に踏み切れば、野党に追い込まれた感が強まる」(関係者)との声が、政府内にはある。

石破首相は、就任直後の2024年10月に大規模な経済対策をちらつかせて衆院選に打って出た。ただ、蓋をあければ少数与党に陥り、「対策がかえって野党に花を持たせる結果となった」と、別の政府関係者は振り返る。

首相周辺からは「先行きの状況次第で(補正予算の編成を)否定しない」との声も聞かれるが、足元で浮上している対策案の効果がみえづらいうえ、少数与党下で補正を打ったところで「結局、国会を通らない」と、前出の政府関係者は語る。

<格下げなら追加負担>

「経済あっての財政」を掲げ、野放図な財政運営を続ければ、国際社会から厳しい目を向けられる懸念が強まるのは必至だ。

24年初夏の国民議会選挙で与党連合が過半数割れとなったフランスは、政治的な混乱を受けた「財政赤字を継続的に縮小できる可能性が低い」ことを理由に、米格付け大手ムーディーズから格下げされた。

仏国債の格下げと併せ、BNPパリバなど主要7行の格付けも下げられた経緯がある。

日本国債はすでにシングルA格に位置し、「ワンノッチの引き下げでB格となり、海外の年金基金などの運用対象外になる」(銀行関係者)。国債が売却されれば長期金利の上昇を通じ、利払い負担の増加が避けられない。

さらに、邦銀や事業法人の資金調達に影響することも予想され、対策規模以上に「将来の追加コストを支払わざるを得なくなる」(別の銀行関係者)と警戒する声も出ている。

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