アフリカで進行する「静かな感染拡大」 深刻な新型コロナのデータ不足
タンザニアが抱える問題
タンザニアで初の新型コロナウイルス感染症患者が確認されたのは3月16日。複数の情報提供者によれば、同国政府は翌日、WHOや各国大使館、支援国・機関など国際的パートナーと対応を調整するための対策本部を招集した。
だが、事情に詳しい2人の外交当局者によれば、この対策本部がその後外部の関係者を招くことはなく、何度となく行われた新型コロナ関連の会合に政府当局者は姿を見せなかったという。
「政府が国内における新型コロナウイルス感染症の状況について何ら情報を求めていないことは明らかだ」とある支援当局者は言う。この記事のためにロイターの取材に応じた多くの関係者と同様、この支援当局者も、有力政治家を怒らせることを懸念して、匿名を希望している。
危機対応をめぐる疑問をぶつけるため、タンザニアのユミー・ムワリム保健相と政府報道官に電話・メールで問い合わせを行ったが、反応は得られなかった。ハッサン・アバッシ報道官は以前、国内の新型コロナウイルス感染症に関する情報隠蔽(いんぺい)を否定している。
タンザニアは5月8日に感染者509人、死者21人を発表して以来、全国レベルの数値を公表していない。その数日前、マグフリ大統領は国営テレビで、海外から輸入された検査キットは欠陥品であり、ヤギやポポーの実から採取したサンプルでも陽性反応が出たと批判した。
5月8日から13日にかけて送付されたメール3通をロイターが閲覧したところ、WHOは、タンザニア国内における合同調査にWHOが参加することで政府との合意に達したものと考えていた。だがWHOの広報担当者によれば、この合同調査は開始予定日にすべて中止され、その理由は示されなかったという。
タンザニアの新型コロナ対策に対しては、支援国・機関から約4000万ドル(約43億円)が拠出されていることを、関与した2人の外交関係者が明らかにしている。だが別の当局者によれば、タンザニアが対策に本腰を入れないため、さらに「数千万ドル」もの支援を得る機会が失われてしまったという。
5月半ばには、医師や外交官らが感染封じ込めには程遠いことを指摘していたにもかかわらず、政府はロックダウン(封鎖)の緩和を決定した。米国大使館は5月13日、タンザニア国内の米国民に対し、首都ダルエスサラームの病院が「手一杯」になっていると警告したが、この時点ではタンザニア政府はこの見方を否定している。
タンザニアが感染拡大に関する情報を共有しないことで、近隣諸国も懸念を深めている。管理の甘い国境を越えてタンザニア国民が往来すれば、各々の国において苦痛を伴うロックダウンを通じて得た成果が台無しになりかねないからだ。
ヤオ氏によれば、WHOは4月23日、アフリカ諸国の保健担当大臣とともに、特に情報共有の不足に関する協議を行う電話会議を主催したという。ヤオ氏はどの国の大臣が協議に応じたかを明らかにせず、タンザニアに同国保健相の参加の有無についてコメントを求めたが、回答は得られなかった。