アフリカで進行する「静かな感染拡大」 深刻な新型コロナのデータ不足
新型コロナウイルスの検査数など信頼できるデータの不足はアフリカ諸国の多くに共通する問題だ。トラック運転手の検査を準備するケニア衛生当局の医療従事者。5月12日、ケニアとタンザニアの国境で撮影(2020年 ロイター/Thomas Mukoya)
タンザニアのジョン・マグフリ大統領は4月中旬、新型コロナウイルスから国が守られるよう、全国的に3日間の祈りを捧げることを呼びかけた。だが1カ月も経たないうちに、大統領は新型コロナに対する勝利を宣言し、東アフリカに位置する自国への観光再開を呼びかけた。
世界保健機構(WHO)は、5500万の人口を擁するタンザニアは東アフリカ地域でも最も医療システムが脆弱な国の1つで、国内でのウイルスまん延についてはほとんど情報がないと警告していた。
信頼できるデータの不足はアフリカ諸国の多くに共通する問題だ。国によっては、政府が感染症の拡大を認めたがらない、あるいは崩壊にひんした医療システムが他国による検証にさらされるのを嫌がる場合もある。また、貧困と紛争によって疲弊し、そもそも相当規模の検査を行う力がない国もある。
アフリカにおける新型コロナ対策には、計画策定の点でも資金支援を募るという点でも情報の共有が不可欠だと公衆衛生専門家は指摘する。現状では、アフリカ大陸全域での感染の深刻さを十分に評価することは不可能である。
ロイターが収集した最新のデータによれば、人口13億人を抱えるアフリカ大陸では、新型コロナの感染確認者は49万3000人、死者は1万1600人となっている。これに対し、人口が約半分のラテンアメリカでは、感染者290万人、死者は12万9900人となっている。
公式数値だけ見るとアフリカの大半では新型コロナ禍を免れているようだが、もっと悪いのは確実だ。WHOのサンバ・ソウ特使は5月25日、検査に重点を置かなければ、「静かな感染拡大」の可能性が生じると警告している。
アフリカ連合が2017年に設立したアフリカ疾病予防管理センター(CDC)のデータをロイターが分析したところ、アフリカ大陸全体では、7月7日までに人口100万人当たり4200件の検査が行われている。これに対し、アジアでは同7650件、欧州では7万4255件だ。
医療従事者、外交官、現地当局者数十人に対するインタビューから明らかになったのは、大半のアフリカ諸国で信頼性の高い検査がほとんど行われていないという問題だけではない。一部の政府は、たとえ資金援助を受ける機会を逸することになろうとも、感染率に関する情報が表面化することを防ごうと手を尽くしているのだ。
WHOアフリカプログラムの緊急対応責任者マイケル・ヤオ氏はロイターに対し、「その国の意図に反して支援することはできない」と語った。「国によっては、対策会議を開いているのに我々に声を掛けないところもある。専門的なアドバイスに関しては我々が主役だと想定されているのだが」
WHOとしては各国政府との協力関係を維持しなければならないとして、ヤオ氏は特定の国の名を挙げることは控えた。