結婚に学習修了証が必要に? 幼児の3割に障害のあるインドネシア、育児・栄養学の普及へ
インドネシアの赤ちゃん Beawiharta Beawiharta-REUTER
<出生率が2.4人という国で、育児を学ぶことを結婚の前提条件とする動きが>
インドネシアで今後結婚しようとするカップルは、結婚生活で子供をもつために必要な一定の乳児・幼児教育や栄養学といった知識を習得して「結婚するに十分な準備が整った」という証明書が必要になるかもしれない、というショッキングなニュースが「ジャカルタ・グローブ」(電子版)で報じられ、若い男女の間から戸惑いの声があがる事態になっている。
10月23日に発足したジョコ・ウィドド大統領の2期目新政権で新たに人間・文化開発担当調整相に任命されたムハジル・エフェンディ氏が講演で明らかにした。
11月13日にジャカルタ南郊のボゴールの国際会議場で開催された全国知事、市長、地方政府の長を集めたセミナーでムハジル調整相は「インドネシアの将来を担う子供たちの間で発育障害や成長障害の問題が深刻化している」と問題を提起し、そのうえで「こうした問題の一因には子をもつ両親の乳児、幼児の成長に関する知識の不足、栄養学の理解欠如などが影響していると考えられる」との認識を示した。
そしてこうした問題の解決策の一つとして「今後結婚を考える若い男女に対して乳幼児の育児、栄養摂取、生活習慣などに関する事前学習を受けさせ、その学習課程を修了したという証明書のようなものを発行し、それを結婚の前提条件とするようなことも検討してみてはどうだろうか」という案を示した。
米の研ぎ汁に砂糖でミルク代用
ムハジル調整相は元教育文化相で教育行政にも精通しているイスラム教徒だが、「インドネシアの5歳以下の幼児の31%が成長・発達障害を抱えていることを示している」(2018年保健省調査)というデータを重視していることを明らかにしている。
こうした成長・発達障害の一因として両親の栄養に関する知識不足、乳幼児の発育、成長に対する知識の不足あるいは欠如があると指摘されている。
インドネシアでは地方や貧困層では未だに母乳や粉ミルクの代用品として砂糖がたっぷり入った甘い紅茶やコメの研ぎ汁に砂糖を加えたものを乳児に飲ませる習慣が残っている。
さらに幼児のころから大人同様に「ゴレンガン」といわれる野菜などなんでも油で揚げた食料を与えたり、ヤシ油やヤシ汁を大量に含む食料品を与えたりするなど栄養面での知識不足が発達に影響を与えているとという。
また都市部の中間層以上は平均気温が30度前後のため乳幼児もエアコンの冷房下で就寝することが多く、冷房のない家庭では少しでも涼しいようにと床に直接寝かせることなどから体が冷えて風邪や疾病にかかることも多いとされている。
こういった育児に関する知識を学習する機会はインドネシアではほとんどなく、「家庭や地域で親や年長者から伝えられるだけ」というのが実状で、「コメの研ぎ汁に砂糖でミルクの代用」など、昔ながらの「生活の知恵」だけが伝えられており、「(育児をするには)不適切かつ不十分」(ムハジル調整相)という。