結婚に学習修了証が必要に? 幼児の3割に障害のあるインドネシア、育児・栄養学の普及へ
手本はキリスト教会の結婚講座
こうしたインドネシアの状況に対してムハジル調整相は「現在では結婚前の若い男女が正しい結婚生活の知恵、育児の知識を学ぶことのできる機会は極めて限られる」として、参考になるケースとして一部のキリスト教会で結婚を前にした男女に対して実施されている「結婚講座」をあげた。
「結婚講座」では結婚の意味のほかに家族計画、家庭財政、夫婦の心理学そして児童教育などがキリスト教の教理・倫理に基づいて学習することができるという。
「乳幼児の成長に悪影響を与える疾病や成長・発達障害につながるような問題に関する知識、情報を与える必要があり、そうしたことを学んだという証明書が結婚の準備が整ったことを示すことになる」とムハジル調整相は話している。
こうした婚前の男女による「結婚前学習の証明書発行構想」については今後ファフルル・ラジ宗教相、テラワン・アグス・プトラント保健相、さらに宗教省、保健相担当者などと実施方法や実施期間、内容などについて協議を進めて2020年には実施したいとの考えをムハジル調整相は明らかにしている。
そして「忘れないでほしい、子供の発育・成長障害はとても危険なことである。それだけに2020年の可能な限り早い時期からこの制度を導入したい」と極めて前向きな姿勢を示している。
このためインドネシアで結婚を考える男女は、子供をもうけないとしても結婚に際して「結婚前学習過程修了証明書」のようなものの提示が必須になりそうな状況だ。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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