「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新技術でこんなに変わった「考古学」の現場風景

The Past Is Closer Now

2025年3月13日(木)16時45分
コリン・ジョイス(在英ジャーナリスト、本誌コラムニスト)

リチャード3世の遺骨の発掘現場に立つモリス

リチャード3世の遺骨の発掘現場に立つモリス DARREN STAPLESーREUTERS

黒海のより深い水域で、オルティスバスケスは考古学史上最も高価なプロジェクトの1つに取り組んだ。遠隔操作型無人潜水機(ROV)を使って地球物理学的な調査を行い、1万2000年前にそこに住んでいた人々への海面上昇の影響を探った。

その過程で、9〜19世紀の1000年間にわたって沈没した40隻以上の船の「墓場」を発見した。水深は2000メートルにも及んだ。


「船の上では、休みなしに作業し続ける」と、オルティスバスケスは言う。「プレッシャーは大きい。チャンスは1回しかない。同じプロジェクトへの資金提供者が再び現れることはほとんど期待できないからだ」

沈没船に関しては、沈没場所の特定や引き揚げがしやすい浅い海域の船は、既にほぼ調査し尽くされている。今日の考古学者は、広大な海の深い海底を探さなくてはならない。

考古学者はそのために、海底の画像を人力で1つずつ調べるのではなく、AIを使うようになった。例えば海上から撮った画像をAIに判読させ、海底に船が沈んでいるかどうかを識別する。それ以外にも無人潜水機により、人間の潜水士には危険だったり時間がかかりすぎたりする調査活動が可能になった。

問題は、莫大な費用がかかることだ。そこで海洋考古学者はとりわけ、最も価値のある調査対象に絞って活動を行うことが要求される。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:アフリカのコロナ犠牲者17万人超、予想を

ワールド

米上院、つなぎ予算案可決 政府機関閉鎖ぎりぎりで回

ワールド

プーチン氏「クルスク州のウクライナ兵の命を保証」、

ビジネス

米国株式市場=急反発、割安銘柄に買い 今週は関税政
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 5
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 8
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中