「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新技術でこんなに変わった「考古学」の現場風景
The Past Is Closer Now
紀元61年頃にケルト人の女王ブーディカがローマ帝国への反乱を起こした際に、町が焼き払われたことでも有名だ。地中を深く掘ると、当時の焼け焦げた地層が見つかる。
2004年には、おそらくイギリス唯一となる、ローマ時代の戦車競技場が発見された。14年には、百貨店の下の地中から大量の装飾品やコインが掘り出されている。
「2000年前の財宝」のニュースは全英を駆け巡ったが、遺物を発見したコルチェスター考古学トラストのアダム・ワイトマンはむしろ、財宝のそばで見つかったもの──焼け焦げた食べ物のことを話したがる。分析の結果、その中にはイチジク、デーツ、フェヌグリーク、コリアンダーなどが含まれていた。
「裕福なローマ人夫婦の生活ぶりが見えてくる。ローマ帝国による征服からわずか10年ほど後に、夫婦は帝国内のあらゆる場所から食材を調達していた」と、ワイトマンは言う。「夫はローマの元軍人だったことが分かっている。おそらく征服に加わり、土地を与えられて定住したのだろう」。そして、ブーディカの反乱で殺害された可能性が極めて高い。
しかし地中や海中の遺物が、発掘される日を安全な環境の中で待っていると考えるのは認識が甘い。例えば、発掘されたリチャード3世の遺体は両足が欠けている。過去の建築工事で破壊されたのだろう。気候変動が海中の遺物に及ぼす悪影響も見過ごせない。