アメリカの対中優位は揺るがないのか......「旧友」ジョセフ・ナイ教授との議論

ナイ教授はアメリカの対中優位は変わらないと主張するが VISUAL CHINA GROUP/GETTY IMAGES
<外国から領土や利権を得ようとするトランプ政権のやり方では、アメリカのソフトパワーも失われる>
本誌2月25日号に掲載された、「ソフトパワー」論のジョセフ(ジョー)・ナイ教授の論考「中国との新冷戦でアメリカが優位な訳」を読んだ。この中で彼は、総合的に見てアメリカの優位は変わらない、特に同盟国やソフトパワーを持っている点で中国に優る、と述べている。
筆者がボストンにいた時代、彼とは時々「意見を交換」した(まず彼が口早にこちらを「口頭試問」して、合格すると相手をしてくれるという感じだったが)。懐かしい。久しぶりに、議論を仕掛けてみる。
筆者はこれまでずっと日米同盟を支持してきたが、トランプ大統領には懸念を覚えている。彼は、戦後の世界の枠組みはアメリカに不利なものになってきたとして、これを壊しかねないからだ。
戦後、アメリカをハブに結成されたNATO、日米安保条約などの同盟体制は、ソ連と中国が専制主義の体制を周辺に力で広げようとするのに対抗して結成されたものである。欧州では東欧がソ連の手に落ちたし、アジアでは朝鮮戦争が起きた。
だからこそ、米ソ冷戦や今の米中対立が起きているのだ。ところが、トランプ大統領のやり方は乱暴で、国外で領土や利権を獲得しようとする姿勢も隠さない。中国、ロシアがしてきたことと大差はない。
これではアメリカの外交は単なる力、つまり世界最大の輸入市場、「世界基軸通貨」であるドル、そして軍事力によることになる。モラル上のアメリカの優位、つまり自由と民主主義の旗手という建前とナイ教授の言うソフトパワーはなくなって、単に力と打算で外国との関係を結ぶことになる。
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