「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新技術でこんなに変わった「考古学」の現場風景
The Past Is Closer Now

イングランド南部のウッドヘンジ。デンマークで最近発見された環状木柱列はこの遺跡と明確な類似点があるという THE WALKER/GETTY IMAGES
<「考古学=発掘」のイメージはもう古い?AI、3Dマッピング、地中レーダー探査にDNA解析──新しい技術が人類史の深部を見せてくれる時代が来た>
腰をかがめて土を払い、陶器の破片を見つけて、それを光にかざす......。典型的な考古学者のイメージは、そんな地味なものだろう。だが、実際はかなり違う。現代の考古学は、解剖学や生化学、あるいは建設業までも連想させるような、途方に暮れるほど多様な分野の組み合わせだ。
確かに考古学者は、まだフィールドワークをしている。しかし彼らの仕事をイメージするなら、研究室で働く姿やコンピューターでデータベースを検索している姿、病院でCTスキャナーを借りている姿を思い描くべきだ。彼らの武器は昔ながらの「こて」とブラシより、AI(人工知能)や3Dマッピング、地中レーダー探査、有機残留物分析である。
そして、DNA解析の進化がある。これによって私たちは、人類の物語の最も深い過去をのぞき見ることができる。考古学者は劣化したDNAを含む小さな骨片からでも、研究を行えるようになった。「パターンマッチング技術とコンピューターの処理能力の向上により、非常に断片化したDNAのピースも組み合わせることができる」と、カタール博物館局の考古学者ロブ・カーターは言う。
こうして「アフリカ起源説」(現代の全ての人間はアフリカの初期人類の子孫だとする説)が確認されたばかりか、さらに詳細が加えられた。いわゆる「大移動」(8万〜6万年前)の段階、海と陸のルートの詳細、絶滅したネアンデルタール人やあまり知られていないデニソワ人とホモサピエンスとが交配した証拠、そしてアフリカのさまざまな地域に残った人間の集団間の交流に関する興味深い詳細などが分かってきた。