「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新技術でこんなに変わった「考古学」の現場風景
The Past Is Closer Now
地球は大部分が海で覆われているため、水中にも考古学的に重要なエビデンスがたくさんあるのは言うまでもない。英サウサンプトン大学の海洋考古学者ロドリゴ・オルティスバスケスが言うように、海は「世界最大の博物館」だ。
私たちは沈没船にロマンを感じる。貿易や戦争のために海を渡っているので、その方法に関する情報を蓄えたタイムカプセルのように思えるためだが、実際の役割はそれ以上だ。「私たちは海と深くつながっている。(海から)技術や知識、イデオロギーの伝達について考えることもできる」と、オルティスバスケスは言う。
海を越えた伝達を物語っているかもしれないのが、デンマークのユトランドで2月に発見された環状の木柱列だ。これまでの調査ではイングランドの「ストーンヘンジ」やその近くの木柱列「ウッドヘンジ」と明確な類似点があるという。信仰体系が海を越え、4000年以上前の「原始的」とされる人々に共有されていた可能性があるというのは魅力的な話だ。
水中研究の多くは、実は沈没船ではなく、「沈没景観」を扱っている。人間は海岸線の近くに集住するため氷河期後のように水位が大幅に上がると、居住地全体が水の下に消えてしまう。
オルティスバスケスは、自らダイビングをして水中の遺跡を研究する異色の考古学者だ。カタール博物館局のカーターと共に、バーレーンのアルサヤ島で真珠漁を研究してきた。
土壌が貧弱で気候が厳しい中東地域で、真珠漁は経済の原動力として何世紀も続いた。古代ローマの文献にも記録され、その歴史は新石器時代にまでさかのぼる。