アメリカ式か中国式か? ビッグデータと国家安全保障をめぐる「仁義なき戦い」勃発
THE BATTLE OVER BIG DATA
中国では、データに関して政府に強大な権限を与える法制度が相次いで導入されている。それによって中国当局は、国内で生成された全てのデータの流れをコントロールし、国外へのデータの持ち出しを制限し、そうしたデータの全てを閲覧する力を得た。対象には、中国国内で外国企業が集めたデータも含まれる。
これを受けてアップルと電気自動車大手のテスラは、中国の国内で収集したデータを保管するためのデータセンターを中国に新設することを決めた。
ニューヨーク・タイムズによると、アップルは少なくとも2カ所のデータセンターで、データを「コントロールする権限」を中国側に譲り渡したという。同社は暗号化を解除するキーを中国側で保管することを受け入れ、中国企業の職員がコンピューターを操作することを許したとされる。
その一方で、中国からの撤退を決めた企業もある。マイクロソフトは昨年10月、傘下のビジネス向けSNS「リンクトイン」の中国版サービスを閉鎖することを明らかにした。
バイデン政権も強硬姿勢に
バイデン政権は、少なくとも形の上では前政権の厳しい姿勢を引き継いでいる。昨年6月の大統領令では、外国の敵対勢力と関係があるテック企業がアメリカでもたらすリスクを評価し、その活動を制限する広範な権限を商務長官に与えた。
ドナルド・トランプ前大統領は一昨年、中国発の動画共有サービス「TikTok」がアメリカのユーザーのデータを収集・保管している可能性を示唆し、アメリカ国内での利用を禁止する措置を打ち出した。この方針は激しい論争を呼び、アメリカの裁判所で「恣意的で不合理」と判断されて差し止めになっていた。
ジョー・バイデン大統領はTikTokの利用禁止に関して前政権が打ち出した措置を撤回したが、他の中国企業に厳しい措置で臨む意思は示している。今年3月には、外国の敵対勢力と関係がある企業がもたらすデータ関連リスクに対処する専門グループを商務省に設置した。
今年1月にロイターが3つの匿名の情報源を基に報じたところによると、政府は中国の電子商取引大手アリババのクラウド事業について調査しているとのことだ。しかし、同社に対して国外へのデータの持ち出しを禁止したり、アメリカ人に同社サービスの利用を禁じてはいない。
一方、複数の商務省当局者が本誌に語ったところでは、同省は最近、外国の敵対勢力と関係がある少なくとも4社のテック企業に対する調査を開始したという。「外国の敵対勢力」のなかには、中国以外に北朝鮮、イラン、ベネズエラ、キューバ、ロシアが含まれるが、アメリカでの活動が活発なのは圧倒的に中国企業だということだ。