日本で「食えている画家」は30~50人だけ 完売画家が考える芸術界の問題点
僕は2020年、「ARTIST NEW GATE」という新人画家の登竜門となるコンテストを創設しました。321点の応募があり、最終審査に30作品が残りました。
僕を含めたアーティストやギャラリストなど、審査員7名でグランプリを決めることにしました。持ち点は一人2票。14票中、いちばん多く入った作品がグランプリになるはずでした。ところが、まったくかぶらずに、14作品が残ったのです。
同じ作品を「いい」と思った人がいなかった。それくらい、価値観は多様なのです。美意識は必ずしも一般化できないと、改めて思いました。
ちなみにグランプリは、最終的に話し合いによって決まりました。
芸術に正解はありません。堂々と胸を張って「これが好き」と言っていいのです。
自分の好きを誰かに説明すると、違う意見が出てきます。そのときは怖がらずに、「そういう考え方もあったのか」という新しい視点の発見、ととらえればいいのです。
美術館に行ったのなら、まずは「好きだと思う作品はどれか」と考えながら、ぐるっと一周してみてください。見終わったら、印象に残った作品、好きだと思った作品の前に戻って、どこが好きなのかなと言語化してみる。こうしたことによって、自分の美意識や感性が豊かになっていきます。
「モナ・リザ」は本当に世界一の美女なのか?
「モナ・リザ」は、一般的には芸術史における世界一の美女と評されますし、なんとなくそう考えている人も多いのではないでしょうか。
でも僕は、そう思いません。僕にとっては「なんだか不気味な絵」でしかありません。「あげるよ」と言われても、ほしくありません。
こんなことを書くと専門家の方々には「あいつは何も知らないで」などと怒られるかもしれません。
でも、それの何が問題なのでしょう?
芸術は自分を豊かにするものであって、それ以上でも以下でもないと僕は考えています。芸術に明確な正解があると考えていると、世間がよいという作品に対して自身の意見を表明することが怖くなります。
でも、正解などないのです。専門家と名乗る人間が間違っていることも、いくらでもあります。
本書を読んでくださった方が芸術を語るとき、「私、芸術とかアートって、全然わからないんです」この一言から卒業してくれていたら、うれしいです。
芸術でビジネスに役立つ感性を磨く
ビジネスでは、人を感動させることが購買につながるといいます。
芸術にふれることによって、ビジネスで生かせる感性を育てられます。
芸術に多くふれ、多様な価値観にふれることで、自分の琴線、自分の好みに、ある日突然気づき始めます。
西洋絵画をたくさん見ているうちに、「宗教画は上手なのはわかるけれど、ちょっと重いかな。自分は、印象派の人間っぽい感じが好きかも」ということが、なんとなくわかってくるのです。
最初は、色の好き嫌い程度かもしれません。ですが、回数を重ねるとだんだん自分の好きなのはコントラストが強い絵かな、構図はこっちがいい、という好みまでわかってきます。