コラム

心理学教授が撮ったこの「特別でない」写真に何を見出せるか

2017年12月02日(土)16時37分

From Alfredo Oliva Delgado @alfredooliva

<最近注目を集める、スペイン人のアルフレッド・オリバ・デルガード(59歳)。一般的な日常の光景を撮った写真だが、そこには彼の職業的アイデンティティーと彼自身の性格が映し出されている>

審美性と内面的な心理の投影は、写真にとって極めて大切な要素だ。ドキュメンタリーからファインアートまで、多くの作品にその傾向が見られる。題材の美が一般的であろうがなかろうが、投影される心理が個人的なものであろうが公的なものであろうが、多くの写真家がこの2つの要素を作品の核の1つにしている。

今回取り上げるスペイン人のアルフレッド・オリバ・デルガード(59歳)も、その1人だ。ここ最近注目を集めてきているが、プロの写真家ではない。スペインのセビリア大学の心理学教授である。

デルガードの作品は、特別なシーンを切り取っているわけではない。仕事を外れて彼が旅先で遭遇した、見ようと思えば誰もが出くわせるだろう一般的な日常が大半だ。街角でふと目にした人々、市場、お祭りなどの光景である。ただ、そこに彼独自の審美性と心理的なメタファーを織り交ぜている。

構図が巧みである。ほぼ常にシンプルさが漂っている。1つの写真の中にさまざまな要素が存在していたとしても、それぞれをうまく絡ませながら、イメージ全体を1つの塊として構成している。同時に、光と色が巧みに操られ、うまく分離し、見る者に心地よい安定感とインパクトをもたらしている。

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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