- HOME
- コラム
- Instagramフォトグラファーズ
- 刑務所で写真を独学した男が「アウトライアー」を撮る…
刑務所で写真を独学した男が「アウトライアー」を撮る理由
From Donato Di Camillo @donato_dicamillo
<人生の多くを刑務所で暮らしてきたドナート・ディ・カミーロは、刑務所内で写真に没頭し、出所後、国際的にも評価される写真家になった。彼が撮るのは、社会の周縁で生きる人たちだ>
今回取り上げる写真家は、生まれも育ちもニューヨークというドナート・ディ・カミーロ。ニューヨークを中心とするストリートシーン、とりわけポートレートの撮影に力を入れている38歳の写真家だ。
人生の多くを少年院や刑務所で暮らし、2012年に出所するまでは、カメラで撮影したことがなかったという。だが小さい頃から、ルネサンス絵画をはじめとするヴィジュアルアートに造詣が深かった父親や叔父から影響を受けていた。
また、20年の刑を受けて入った刑務所では(後に、3年+2年のハウスアレスト〔自宅監禁〕に軽減)、人生の大半を無意味に鉄格子の中で過ごしたくないと、物々交換を通してナショナル・ジオグラフィックやライフ、タイムなどの雑誌をかき集め、写真に没頭し、独学で写真を学んだ。ここ数年で国際的にも評価されるようになってきた写真家である。
カミーロの被写体の大半は、社会の周縁で生活している人たち、あるいは「アウトライアー」(平均的なタイプからかけ離れている人や物)だ。通りすがりで出くわせば、一歩引いてしまうか、あるいは取っつきにくいと思わせる被写体が多いだろう。そうした人たちを、しばしば強烈なストロボを多用し、ディテールをはっきりさせ、至近距離で撮影している。
故ダイアン・アーバス、もしくはブルース・ギルデン、ウェイン・ローレンスの作品を思い起こさせるかもしれない。3人とも、現代のポートレート作家として名を馳せている写真家だ。彼らの作品からは、何かに取り憑かれたかのような匂いやエネルギーが発せられている。実際、カミーロがニューヨークのコニーアイランドで撮った作品を初めて見たとき、私自身、ウェイン・ローレンスの作品と錯覚してしまった。
この筆者のコラム
未婚女性やバーニングマン......決して一線は越えない「普通の人」たち 2020.03.13
iPhoneで撮影、北欧の「瞬間」を切り取る20歳のストリートフォトグラファー 2020.02.13
「男が持つ邪悪性をドキュメントしてきた」現代を代表する戦争写真家クリストファー・モーリス 2020.01.16
「アカウントは2回消した、それでも飽きない」本職はビル管理人のフォトグラファーは言う 2019.12.16
トランプ政権誕生でワシントンへ「全てはこのための準備に過ぎなかったとさえ思う」 2019.11.23
世界的な写真家が「魔法的な構図の創作者」を超えた写真 2019.10.27
日本の路地を彷徨い、人生が変わった「不思議と迷わなかった」 2019.09.27