コラム

画家のムンクを思わせる、エジプト革命の写真

2017年03月29日(水)17時41分

Rainy Day Abstract - London, UK 2/2/2017 #☔️

Laura El-Tantawyさん(@laura_eltantawy)がシェアした投稿 -

そんなエル・タンタウィにとって写真は、彼女の言葉を借りれば、自分自身と周りの世界を理解するツールだ。いや、彼女自身の生き方さえも、異なった価値観、文化がもたらした葛藤が何であるのかを追い求めるようになっている。事実、2005年に新聞社を辞めてカイロに行ったのもそのためだ。

カイロではさらなる運命的な出合いが待ってた。もちろん、タハリール広場を発端にしたエジプト革命のことだ。単なる被写体としての革命、あるいはそれに参加、もしくは巻き込まれた人々との遭遇という意味ではない。

【参考記事】強権の崩壊は大卒失業者の反乱で始まった【アラブの春5周年(上)】

エジプト人であることを自らの最大のアイデンティティとして位置付けようとしていた彼女にとって、2011年のタハリール広場と、それ以降の動乱で見たエジプト人たちの姿は、それまで彼女が知っていた、あるいは思い描いていたエジプト人とはまったく違っていたのである。それゆえ、彼女の中にさらなるアイデンティティの葛藤が生じたのである。

だが結局それは、多くのアーティストたちが逆境をバネとしたように、エル・タンタウィにとっても大きなエネルギーの糧になっていった。新たな自分探しに加え、彼女自身が意識するしないに関わらず、異なる世界への架け橋的な探求という旅が始まったのである。

*すでにインスタグラムでも発表されているが、この探求は彼女の新しい写真集"Beyond Here Is Nothing"にまとめられて発表される予定だ。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Laura El-Tantawy @laura_eltantawy

A Boy Named Contentment - I know this is an uneasy picture. I was uncomfortable taking it. I felt Reda's vulnerability and knew he could not see me to understand mine. These are not the pictures I wanted to take in Egypt. This is not what the revolution was supposed to do. "Bread ... Freedom ... Social Justice". I met Reda's mother first. She was in Tahrir Square. She told me about him. His name means 'contentment'. I find names are so revealing when you reflect on their meaning. Meeting Reda, I understood his beautiful name. His parents couldn't have predicted his demeanor when they named him. I believe people grow to encompass the character their name represents. Egypt's current state of affairs leaves me questioning the line between fact and fiction. Activists - young men and women, some in their teens, are being arrested with no question, youths are kidnapped from the safety of their homes, schools and universities leaving behind tormented mothers and grieving fathers, torture in prisons is a reality, voices of dissent are systemically told to shut up and the dream of "Bread, Freedom and Social Justice" has been forgotten. The government with its fleeting post revolution honeymoon phase of transparency has instilled fear in the hearts of Egyptians with voracious propaganda campaigns and outright brainwashing of the public broadcast on television screens, airwaves and pages of daily newspapers. The integrity of the Jan. 25 movement and everyone associated with it has been tarnished - denying that if not for this very movement, the current government would not be. A system of alienation employing an 'Are you with us or against us' rhetoric is now commonplace in a country where unity is the only possibility forward. I think of Reda today. Nineteen-years-old when I photographed him, his world turned dark when a policeman fired rubber pellets into his eyes. There are hundreds of documented cases of police targeting protesters in their eyes. Doctors from Cairo to Germany told Reda it's unlikely he will regain his sight. The legacy of Egypt's revolution is depressing when I think of a young man like Reda. #Egypt #Jan25Anniversary #Revolution #TahrirSquare

Laura El-Tantawyさん(@laura_eltantawy)がシェアした投稿 -

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国CPI、2月は0.7%下落 昨年1月以来のマイ

ワールド

米下院共和党がつなぎ予算案発表 11日採決へ

ビジネス

米FRBは金利政策に慎重であるべき=デイリーSF連

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望的な瞬間、乗客が撮影していた映像が話題
  • 3
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手」を知ってネット爆笑
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 6
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    中国経済に大きな打撃...1-2月の輸出が大幅に減速 …
  • 9
    鳥類の肺に高濃度のマイクロプラスチック検出...ヒト…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story