「中国の接触、米国の標的を避けたい」海運業界で「香港離れ」が静かに進んでいる理由

3月6日、海運業界では国際的な海上輸送のハブである香港から業務を移し、船籍登録を他の地域に変更する動きが静かに進んでいる。香港の港で撮影(2025年 ロイター/Tyrone Siu)
海運業界では国際的な海上輸送のハブである香港から業務を移し、船籍登録を他の地域に変更する動きが静かに進んでいる。香港船籍の船舶を巡り、非常時に中国当局に徴用されたり、米中関係の緊迫に伴い米国の制裁対象になったりするのではないかといった懸念が高まっているためだ。
中国が自国の安全保障における香港の役割を強調している一方、米国は、台湾などを巡る軍事衝突の発生時における中国商船の重要性の分析に力を入れている。海運業界の幹部らは、こうしたことが業界全体に不安を広げていると話した。
香港は100年以上にわたり船主やブローカー、金融業者、保険業者、弁護士といった海運関連業者が集中する拠点となってきた。公式統計によると2022年に海運・港湾業が域内総生産(GDP)に占める比率は4.2%。英情報会社ベッセルズバリューによると船籍登録数は世界で8番目に多い。
しかしロイターが香港の事情に詳しい24人に取材したところ多くの関係者は、安全保障目標を重視する中国の姿勢や貿易摩擦の激化、さらに中国に忠実な香港行政長官が緊急時に海運業務を掌握できる広範な権限を持つといった要因を挙げて、商業海運業界が米中間の軍事衝突に巻き込まれるリスクを懸念する声が高まっていると証言した。
ある業界幹部は「中国がわれわれの船を求めて接触してくる一方で米国がわれわれを標的にするような事態は避けたい」と述べた。