コラム

「iPhoneで3年だけ」の写真家が、写真をアートに昇華させる

2016年02月23日(火)16時12分

From Marina Sersale @eauditalie

 写真家にとって、眼の前にある現実は必ずしも1つだけとは限らない。そこには、多様な要素が存在する。見方を変えれば、あるいは要素の選択を変えれば、さまざまな現実が新たに浮かび上がってくる。今回紹介するイタリアのマリーナ・セルサーレは、そんな信念を持った写真家の1人だ。

 写真のジャンルとしてはストリート・フォトグラフィーになるが、セルサーレは類まれな"眼"を持っており、それが作品をファインアートに昇華させている。なかでも、彼女が好み、見る者を魅了するのは、光と影の交錯だ。

 地中海独特の強烈な陽光だけでなく、鈍い光のときでさえ(例えば、最近アップしているヴェニスの作品シリーズ:下の写真)、ハイコントラストでありながら、同時に柔らかな光のセパレーションを生み出しているのだ。その中で、ありきたりな光景がミステリアスで孤独感を漂わせる未知の世界に変わっていく。どこか重たいくせに、宙に浮いているような錯覚も感じさせる。

 ちなみに、作品の大半は白黒だが、カラーの作品でも同じように、彼女のシグナチャー(写真家のスタイル、オリジナル性、あるいはその匂い)が浮き出ている。

Suspended - Venice

Marina Sersaleさん(@eauditalie)が投稿した写真 -

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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