コラム

急速に勢いを失いつつあるトランプ、大統領選の潮目は変わったのか?

2020年06月30日(火)16時15分

ところが、ここへ来て「トランプ方式」つまり「経済活動再開を加速」しつつ「マスク強制には消極的」だった、テキサス、ジョージア、フロリダ、アリゾナで感染爆発が起きてしまいました。各州は「経済再開の一時凍結」の本心からの切り替えを余儀なくされています。

そんな中、6月28日の日曜日、テキサス州ダラスの大規模教会(メガチャーチ)を訪問した際にマイク・ペンス副大統領は、自らマスク姿で登場して、「マスク着用は良いことだ」と述べたのでした。これを境にトランプ政権のコロナ政策としては、再び専門家チームの発言がメディアに乗るようになっています。

とにかく「経済活動再開」と「マスク着用反対」を軸に、共和党の強い保守州の支持を盤石にするつもりが、その保守州で感染拡大が起きてしまったことで、トランプ路線は破綻したと言っていいでしょう。

2つ目は、6月26日の金曜日に「ニューヨーク・タイムス(電子版)」に掲載された「諜報機関によれば、アフガン武装勢力による米兵殺しに対し、ロシアが秘密裏に報奨金を提示」というスクープです。つまり、ロシアが秘密裏にタリバン等の反米活動を応援していたというストーリーです。

このニュース、かねてよりロシアとの癒着が噂されているトランプ政権に対して、苦々しく思っていたCIAやNSAあるいは軍または国務省の「諜報コミュニティー」が、ある種の総意として、バイデン政権の実現による「ロシアとの対決姿勢」という旧秩序に復帰することを期待して流したものという理解が可能です。

問題はトランプ大統領が、この報道を無視することもできずに「自分に対してはこの情報の事前ブリーフィングがなかった」という愚痴をツイートしてしまったということです。この一言の愚痴により、ただでさえ低下傾向だった大統領の権威が、さらに綻びを見せてきたとも言えると思います。

コロナ危機下、コロナ不況下の大統領選ということで、まだまだ何が起きるか分からないわけですが、もしかしたら大きな潮の変わり目に来ているのかもしれません。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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