コラム

TBS「直撃!コロシアム‼ズバッと!TV」炎上で、出演者として言いたいこと

2016年05月30日(月)16時24分

 実際、中国からの批判は有名人で微博のアカウントを公開している私とタレントの段さんに集中したようだ。明らかにほかの中国人より発言していない2人が炎上するのはなんとも不公平だが、残りの出演者の被害を減らせるならそれでいいし、何より中国人の心を傷つけてしまった自分への「罰」として批判を受け入れ、次のような謝罪文を微博にアップした。


お詫び (1)事前に番組の内容を理解せず収録に参加しました。(2)台本を渡されたのは収録当日でした。読んで構成に疑問を感じ、予定した7カ所の部分でほとんど発言しませんでした。収録後、自分は「打醤油」に来た、と微博に書き込みました。(3)自転車の部分は基本的に台本通りに話しました。収録当時には気づきませんでしたが、その後みなさんの批判を受け適切な内容ではないことに気付きました。議論の論点はズレており、ものごとの筋道に外れた内容でした。ここにみなさまにお詫びします。理解していただきたいのは、私は中国人の悪口を言うために番組収録に参加したのではない、ということです。収録当時、中国人出演者たちはみな中国人の立場から中国人のために説明をしました。ただ編集で明らかに偏った内容に変わっており、利用されたように感じます。この度は誠に申し訳ありませんでした。真摯な意見をくださったみなさまに感謝するとともに、今後の戒めとします。

日本人も中国人も情報操作に踊らされている

 この問題には、日中関係にかかわる重要な論点が含まれている。それは、日本人も中国人も相手側の発言や行動に対して不安を覚え、そして怒っているが、それぞれの目に映るのは、メディアを通じて「編集」された姿でしかない、ということだ。

 今回のTBSの討論番組は、東国原氏や弁護士の北村晴男氏の挑発的な態度に象徴されるような、日本人の中国人に対する悪意を煽る演出が最初から最後まで貫かれていた(友人の周さんが東国原氏のけんか腰にけんか腰で応じていたのは大いに反省すべきだが)。「情報操作」もあった。PM2.5の問題が取り上げられ、放送では、江蘇省で突然鼻血を出す小学生が続出したという昨年のニュースの映像が使われたが、収録現場ではその映像を「放送で使う」という説明が一切なかった。PM2.5自体はニュースとしては古いので新しい要素を足したかったのだろうが、この鼻血問題は中国でも因果関係が疑われている。もし事前に説明があれば、議論の中身は大きく違っただろう。

 番組編集の問題もある。確かに現場の議論は危なっかしいものだったが、元は3時間半もあった議論の中身が1時間にカットされたことで、さらに過激な内容に変えられてしまった。3時間半のフルバージョンが公開されれば(されないと思うが)、違った評価が出るのではないかと思う。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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