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TBS「直撃!コロシアム‼ズバッと!TV」炎上で、出演者として言いたいこと
中国人にも「情報操作」に踊らされている側面がある。今回の番組の問題が中国で広く知られるようになったのは、人民日報系のタブロイド紙の環球時報が内容をかいつまんで記事で紹介したことが大きいが、おそらくネットで私に批判の書き込みをしている中国人のほとんどは番組そのものを見ていない。冒頭で中国共産党の一党独裁批判をしているから公開できないのかもしれないが、いかに偏った編集とはいえ番組全体を見れば、われわれ出演者が中国を貶めるために出演したのではないことは感じ取れるはずだ。
実際、この番組はまともな演出さえ行われれば、現在の日中関係や中国そのものが抱える問題の本質を突く議論になる可能性があった。「日本人は巨大になった中国が自分たちのやり方を押し付けてくるのではないか、と不安になっている」という、パネラーの1人で韓国人言語学者の金慶珠氏の指摘は、今の日本人が中国に対して抱く負の感情を鋭く言い当てている。逆に、中国には「世界第2位の経済大国として、他国が自分たちに抱く感情を理解すべきであり、もう発展途上国だからと言い訳してはならない」と問題提起もしている。評論家の石平氏が語った「日本人と違い、中国人は公共の場所を『自分の場所』と考えがち。それは領土問題にも当てはまる」という主張も、全く根拠がないわけではない。
一国のメディアが作った番組や記事がその国だけにとどまらず、簡単に国境を超える──。今回のケースは、そんなグローバルな時代を象徴する事件でもあった。しかし、こうなると予想できず番組出演を決めてしまったのは、ほかでもない私のミスだ。企業の環境汚染を黙認し、国民の人権をろくに認めない中国共産党を批判することと、中国人を批判することはまったく別。中国人の感情を傷つけてしまったこと、そして誤った情報を日本人に伝えてしまったことに、私は深く傷ついている。この番組を見た日本人、そして傷ついた中国人に改めて心からお詫びします。
実はTBSのテレビ番組に出演するのはほぼ10年ぶりだった。詳しくは著書『歌舞伎町案内人II』(角川書店)を読んで欲しいが、TBS報道局の記者に中国マフィアのドンの取材で裏切られて以来、この放送局とは絶縁状態が続いていたのだ。今回の番組出演でようやく雪解けを迎えたと思っていたが、TBSが私を見習って「お詫び」を出さない限り、残念ながら絶縁状態は継続せざるをえない。わが新宿・湖南菜館にこっそり激辛の湖南料理を食べに来るのは止めないが(笑)。
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