コラム

公園のデザインに見る日本と欧州の防犯意識の違い

2025年03月05日(水)11時00分
雨の日の公園

(写真はイメージです) Julia Senkevich-Shutterstock

<誰にでも開かれている日本の公園が犯罪の温床になりやすい理由とは──>

「入りやすく見えにくい場所」で犯罪が起きやすいという「犯罪機会論」は、防犯のグローバル・スタンダードであるにもかかわらず、日本では普及していない。その理由は、日本では城壁都市が作られてこなかったからだ。つまり、城壁都市こそが「入りやすく見えにくくするデザイン」のルーツなのである。

海外では、今から1万年前から城壁都市を作ってきた。言い換えれば、1万年前から犯罪機会論を実践してきたのである。一方、日本人は、中国に城壁都市があることは知っていたが、あえてそのデザインを輸入しなかった。そこまでの防犯意識や危機意識がなかったからだ。その歴史的事実が、現在の防犯対策におけるガラパゴス状態を生んでしまった。

ゾーニングの効果

犯罪機会論の有無が端的に現れるのが公園の設計だ。なぜなら、公園のデザインこそ、城壁都市そのものだからだ。海外の公園は、領域性(入りにくさ)と監視性(見えやすさ)に配慮して設計されている。しかし、日本の公園にはそうした配慮が乏しい。

子供を狙った犯罪者は公園に頻繁に現れる。なぜなら、子供がたくさんいるからだ。そのため、海外では公園を造る場合、公園を悪用する人は必ずいるという前提で、子供をだますことが難しくなるような工夫を凝らしている。それが犯罪機会論だ。

例えば、広々とした公園でも、遊具は1カ所に集め、そこをフェンスで囲っている。つまり、公園内を子供用のスペースと大人用のスペースに区分し、互いに入りにくい状況を作っているわけだ。こうした手法は、ゾーニング(すみ分け)と呼ばれている。フェンスで仕切られた遊び場では、子供専用のスペースに入るだけで、子供も周りの大人も警戒するので、だまして連れ出すことは難しい。

プロフィール

小宮信夫

立正大学教授(犯罪学)/社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ——遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材(これまでの記事は1700件以上)、全国各地での講演も多数。公式ホームページとYouTube チャンネルは「小宮信夫の犯罪学の部屋」。

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